施術を受けるたびに、身体は右肩上がりにどんどん良くなっていく。
そのような変化をイメージする方も多いかもしれません。
しかし、身体は一度変化しただけで、その状態がすぐに定着するわけではありません。
これまでの身体よりも、新しい状態の方が心地良い。安心できる。
身体がそう認識し、新しい状態が定着するまでには、元に戻ろうとする力が働きます。
これまでの身体で過ごした時間が長ければ長いほど、慣れ親しんだ状態へ戻ろうとする力も強くなります。
この記事では、誰の身体にも働く「元に戻ろうとする力」と、良い変化を定着させるために必要な時間や過ごし方についてお伝えします。
身体には、安定した状態を保とうとする力がある
私たちの身体には、命を守るために、状態を一定に保とうとする働きが備わっています。
その代表的なものが体温です。
暑さや寒さ、雨や雪、気圧や湿度など、外側の環境は日々変化しています。
それでも、特別な不調がない限り、体温が毎日大きく変化することはありません。
外側の環境が変わっても、身体の内側をできる限り安定させることで、私たちの身体は命を守ろうとしています。
この安定を保とうとする力は、痛みや不調がある時にも働きます。
例えば、突然現れた腰痛が数週間、数か月と続き、慢性化したとします。
痛みがある状態で過ごす時間が長くなると、身体はその痛みも含めてバランスを取り始めます。
言い方が適切かは分かりませんが、不調を抱えている現在の身体は、ある意味、その人なりのベストバランスを保っている状態でもあります。
施術によって、今までのバランスが動き始める
施術によって身体に変化が起こると、それまで保ってきたバランスが動き始めます。
今までの身体にとっては、新しい状態はまだ慣れていない場所です。
変化の途中では、一時的に身体が揺れたり、以前の状態へ戻ったように感じたりすることがあります。
このような一時的な変化は、一般に「好転反応」と呼ばれることもあります。
身体からすると、まだ付き合いの短い新しい状態よりも、長年慣れ親しんできた状態の方が安心できます。
だからこそ、身体は一度知った安定した場所へ戻ろうとします。
これは、身体を良くしていく過程で、多くの方に起こる自然な反応です。
しかし、この力を知らなければ、思うような変化が見えない時に、焦ったり、落ち込んだり、取り組んでいることを途中でやめたくなったりします。
身体に変化がないのではなく、新しい状態がまだ身体に定着していない。
まずは、そのように身体をみることが大切です。
不調と過ごした期間が長いほど、変化にも時間が必要
現在の心や身体は、生まれ持った性質だけではなく、これまで過ごしてきた環境や日々の習慣によってつくられています。
長年続いている痛みや不調は、本人にとって自分自身の一部のようになっていることもあります。
大人になってから性格や考え方を変えることが簡単ではないように、長い年月をかけて身についた身体の使い方や生活習慣も、すぐには変わりません。
不調と慣れ親しんだ期間が長ければ長いほど、元の状態へ戻ろうとする力も強く働きます。
だからこそ、身体が「こちらの状態の方が心地良い」と認識するまで、新しい状態を繰り返し経験させ、少しずつ定着させていく必要があります。
そのためには、施術を受けるだけではなく、これまで身体をつくってきた日々の習慣も、一緒に変えていくことが大切です。
今までのパターンを思い切って変える
身体を良い状態へ変えていきたい時に大切なのは、これまでのパターンを見直すことです。
この時のポイントは、思い切って変えること。
今までとほとんど変わらない生活を続けながら、身体だけを大きく変えようとしても、長年身についた行動や考え方の範囲から抜け出すことはできません。
これまでの自分の常識や、当たり前に繰り返してきた習慣を、一度大きく崩す必要があることもあります。
子どもは、真っ白なキャンバスのような存在です。
純粋で、素直で、柔軟に新しいことを吸収します。
一方、大人は年齢を重ねるほど、これまでの経験や自分なりの考えが積み重なり、新しいことをそのまま受け入れるのが難しくなります。
教わったことに自分の考えを足したり、いつの間にか違う方法へ変えてしまったりすることもあります。
これまで自分でつくり上げてきたパターンを変えるには、思い切りが必要です。
そして、自分一人の力だけでは、いつものパターンに気づけないこともあります。
すでに施術を受けている方は、身体の状態や疑問を担当の先生と共有しながら進めることも大切です。
当院へ通われている方も、身体について分からないことがありましたら、遠慮なくお聞きください。
目安は3か月。淡々と同じことを続ける
春夏秋冬と、季節がおよそ3か月ごとに移り変わるように、身体の変化をみるうえでも、当院では3か月を一つの目安にしています。
何か新しいことを始めた直後は、気持ちも高まり、変化を感じやすい時期です。
しかし、身体に新しい状態を定着させるためには、一時的に頑張るだけでは足りません。
新しい習慣を繰り返し、
「これからの身体は、こちらですよ」
と身体へ覚えさせていく。
その積み重ねによって、最初は不安定だった新しい状態が、少しずつ身体にとって安心できる場所へ変わっていきます。
周囲の変化に引っ張られず、淡々と行う
身体は、天候や気温、気圧、湿度など、外側の環境から影響を受けています。
同時に、喜びや悲しみ、焦りや不安など、自分の内側で起こる感情によっても毎日変化します。
特に近年は気候の変化も大きく、心や身体の状態が揺れやすくなっています。
その時々の変化に必要以上に引っ張られると、良くなった、悪くなったと一喜一憂し、続けてきたことまで変えたくなります。
何にも動じないようにする必要はありません。
ただ、その日の小さな変化に振り回されず、決めたことを淡々と続ける。
それが、新しい状態を身体へ定着させるための近道です。
色々なことを増やさず、同じことをコツコツ続ける
身体を良くしたいという思いが強いほど、色々なことを行いたくなります。
食事を変える。
運動を始める。
健康食品を取り入れる。
新しい施術を受ける。
しかし、同時に色々なことを始めると、何によって身体が変化したのか分からなくなります。
同じことをコツコツ続けるからこそ、昨日と今日、先週と今週の身体の違いに気づけます。
淡々と、同じことを続ける。
とてもシンプルですが、身体を着実に変えていくための基本です。
身体の変化は1年単位で観察する
自分の身体がどれくらい変わったのかを見る時は、その日やその週だけで判断せず、1年単位で観察します。
途中で調子の良い日や悪い日があっても、1年前、2年前と比べて少しずつ良い方向へ進んでいるのであれば、それは大きな変化です。
自分が不調になりやすい季節。
元気に過ごしやすい季節。
無理をしやすい時期。
心や身体が安定しやすい時期。
身体を長い目で観察することで、自分自身のパターンが見えるようになります。
その都度気づき、必要な部分を修正していく。
そうすることで、身体についてだけではなく、自分自身への理解も深まっていきます。
一瞬の変化より、末広がりに良くなる身体へ
長年染みついた行動や考え方が簡単には変わらないように、不調と過ごした時間が長いほど、身体も一瞬では変わりません。
一時的に調子が良くなることだけではなく、少しずつ良い方向へ進み、その状態が身体になじんでいくことを大切にしています。
人生は短距離走ではなく、長距離走。
年齢を重ねても、その時の自分なりに動き、やりたいことを選び、人生を楽しめる身体でいられたらと思います。
先細りではなく、細く長く、末広がりに。
今、身体にかける時間が、これからの日々を支えるものになれば幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。









