季節の変わり目は、気温が上がったり下がったり、朝晩と日中の寒暖差も大きくなります。
このような時期は、
・疲労感や倦怠感が抜けない
・頭痛がする、頭が重い
・めまいがする
・首や肩周りがガチガチに硬い
などの不調を感じる方が多くみられます。
身体は急激な温度変化についていかなければならず、私たちが想像する以上に疲れています。
今回は、寒暖差によって不調が現れる理由と、日常で取り入れられる身体の整え方についてお伝えします。
寒暖差で不調になる理由
東洋医学的に考えた場合、日常の範囲で気温が寒い、暑いということそのものよりも、身体にとって負担となりやすいのは、その落差です。
東洋医学では、身体も感情も一定の状態にとどまらず、変化しながらバランスを取っていると考えます。
そして、その変化や落差が急激になると、身体が対応しきれず、不調につながることがあります。
ここで一つ、感情による落差の例を取り上げます。
長年体調が優れなかった方の身体が回復してきたため、張り切って旅行へ行き、思いきり楽しんだ後に体調を崩すといったパターンです。
一見、楽しい出来事にはストレスがないように思えます。しかし、大きな喜びや興奮も、身体にとっては一つの急激な変化です。
では、どのようにすれば、こうした落差による身体への負担を和らげることができるのでしょうか。
大切なのは、日々の生活の中で、できるだけ真ん中に戻れる身体をつくっておくことです。
東洋医学で考える、身体の土台となる胃腸
東洋医学では、胃腸は身体の中心となる土台であると考えます。
胃腸は、五行では「土(ど)」に属します。
土は、植物を育てるために欠かせないものです。
どれだけ良い種を蒔いても、栄養を含んだ良質な土がなければ、作物は健やかに育ちません。
人の身体も同じように、胃腸が身体の土台となります。
胃腸の働きが弱っていると、食べたものをうまく消化・吸収することができず、身体に必要な栄養を十分に取り込めないため、元気が出にくくなります。
身体が本来持っている回復する力も働きづらくなり、不調から抜け出すまでに時間がかかることがあります。
身体が回復する力を十分に発揮できない状態では、急激な気候の変化にも適応しづらくなります。
胃腸を整えることは、身体の中心となる土台を強くし、たとえ外側の変化に揺さぶられても、真ん中へ戻れる身体をつくることにつながります。
季節の変わり目に取り入れたい養生
胃腸に優しい食事と生活を心がける
1.冷たい飲み物は控え、常温または温かい飲み物をいただく
2.味の濃いものや、甘すぎるものを控える
3.質の良い野菜や、旬の野菜を取り入れる
東洋医学の養生では、その季節に採れる旬の野菜を食事に取り入れることを大切にします。
おすすめは、季節の野菜を使った豚汁や、季節の野菜、ハーブ、塩のみで味付けしたシンプルなスープです。
温かい汁物は胃腸を温めながら、野菜も一緒に取り入れることができます。
日中にいただくのも良いですが、晩ごはんに温かい汁物を取り入れると、お腹が温まり、身体も眠る準備へ入りやすくなります。
眠る前に身体を整える
睡眠は、その日の身体の疲労を癒やし、次の日を元気な状態で迎えるために大切な時間です。
良質な睡眠は、気候の落差によって疲れた身体を回復させ、身体をフラットな状態へ戻すことにつながります。
そのためには、眠る前に身体の緊張を和らげ、リラックスした状態で眠りにつくことが大切です。
背中には、心身の緊張を和らげる際や、胃腸の働きを整える際に用いられるツボがあります。
その中から、ご自宅でも取り入れやすい「胃の六つ灸(いのむつきゅう)」と呼ばれる六つのツボをご紹介します。
眠る前のセルフケア「胃の六つ灸」
ツボの名前は、上から順に、
・膈兪(かくゆ)
・肝兪(かんゆ)
・脾兪(ひゆ)
です。
それぞれ左右に一つずつあるため、合わせて六つのツボになります。
膈兪(かくゆ)
東洋医学では、冷えや肩こり、月経に伴う不調など、「血」の滞りが関係する症状に用いられるツボです。
血の巡りや、胃腸の働きを整える際にも用いられます。
【場所】
左右の肩甲骨の下を結んだ高さで、背骨の中心から指幅二本ほど外側にあります。
肝兪(かんゆ)
東洋医学でいう「肝」に関係するツボです。
ストレスやイライラに伴う胃の不調、目の疲れなどに用いられます。
【場所】
膈兪から、背骨二つ分ほど下がった高さにあります。
脾兪(ひゆ)
東洋医学でいう「脾」に関係するツボです。
胃腸の消化・吸収を助け、全身の疲れを整える際に用いられます。
【場所】
肝兪から、さらに背骨二つ分ほど下がった高さにあります。
ツボの位置には体格による個人差があります。セルフケアでは一点を強く刺激するのではなく、この周辺を広く、優しく温める程度で十分です。
寒暖差によって疲労感や倦怠感が現れている方は、この周辺がガチガチに硬くなっていることが多くあります。
「胃の六つ灸」と呼ばれているため、通常はお灸に使われるツボですが、セルフケアでは必ずしもお灸でなくても大丈夫です。
当院で患者さんによくお伝えしているのは、仰向けに寝た状態で、丸めたフェイスタオルを背中に挟み、膝を立てて身体を左右にゆっくりと揺らす方法です。
タオルの代わりに、身体への使用が認められている温熱用品を使い、それぞれの場所を一〜二分ずつ優しく温める方法もあります。
同時にお腹を温めると、お腹と背中の両方が温かくなり、身体の緊張も和らぎやすくなります。
五〜十分ほど行い、温熱用品を外してから眠るようにしてください。
温熱用品を使用する場合は、低温やけどを防ぐため、商品の使用方法を守り、就寝中は使用しないようにしてください。
痛みやしびれ、不快感がある場合は、無理をせず中止しましょう。
眠る前にこの一連の流れを習慣にし、自分の身体へ意識を向けるようになると、首や頭と首の付け根など、その日によって硬くなっている場所にも気づきやすくなります。
その場合も、一点を強く押すのではなく、硬さを感じる周辺を優しく温めるようにします。
また、良質な睡眠という点では、眠るときに身につけるものの肌触りも大切です。
肌着や下着、寝巻きなど、肌に直接触れるものは、身体が心地よいと感じられる素材を選んでみてください。

疲れた身体に必要なのは、優しい刺激
現代人は知らず知らずのうちに、天候をはじめ、情報、環境、食など、さまざまなアップダウンや落差にさらされています。
そのため、心身ともに疲れている方が多くみられます。
身体が疲れているときには、自分を労り、優しく過ごすことが大切です。
しかし、実際に身体を労るために選んでいるものが、甘いお菓子や味の濃いもの、刺激的な音楽や情報、強い香りなど、身体にとってさらに強い刺激になっていることがあります。
次第にその刺激にも慣れ、感覚が鈍くなり、さらに強い刺激を求め続けることで、身体がより疲れてしまうという負の循環に陥ることもあります。
疲れた身体が求めているのは、素朴で優しい味、自然の音や香り、心が安らぐ穏やかな情報や言葉などです。
一瞬で目を奪われるような強い刺激ではなく、平凡で物足りないくらいの優しい刺激が、疲れた身体を癒やし、労ってくれます。
さまざまな刺激に揺さぶられ続ける世の中だからこそ、日頃からできるだけ優しいものに触れ、いつでも真ん中に戻れる身体に整えておくこと。
それは、寒暖差の大きな季節を乗り越えるためだけではなく、変化の激しい日々を健やかに過ごしていくためにも大切です。
外側の刺激に振り回され続けるのではなく、優しくて温かい、安心できる居場所を自分の中心につくっていきたいものです。









