嬉しくなったり、腹が立ったり、悲しくなったり。
私たちの気分は、日々の出来事や身体の状態によって変化しています。
けれど、「気分屋」という言葉には、どこか否定的な響きがあります。昨日と今日で気持ちが違う自分に、一貫性がないと感じることもあるかもしれません。
もちろん、気分のままに周囲へ当たることと、気持ちが変化することは別です。
ただ、気分が変わること自体を、悪いことと決めつける必要はありません。
一つの感情にとらわれ続けず、気持ちが移り変わっていくこと。それは、自分自身を守ることにもつながると考えています。
「変わらないこと」だけが良いとは限らない
「朝令暮改(ちょうれいぼかい)」という言葉があります。
朝に出した命令を夕方には改めることを指し、一般には、方針が頻繁に変わって一定しないという否定的な意味で使われます。
ただ、少し視点を変えると、状況に合わせて考えや行動を見直すことが必要な場面もあります。
朝は元気でも、夕方には疲れている。
昨日は人に会いたかったけれど、今日は静かに過ごしたい。
状況も身体も変わっているのに、最初に決めたことだけを守ろうとすれば、無理が生じることもあります。
一度決めたことを大切にする姿勢と、今の状態に合わせて改める柔軟さ。その両方があってもよいのではないでしょうか。
同じ道を歩いても、同じ朝はない
同じ季節、同じ時間帯、同じ道を歩いていても、気温や湿度、風の冷たさは毎日違います。
目に入る風景も、香りも、肌の感触も少しずつ変わります。
私たちは同じような日々を過ごしているつもりでも、自然は常に変化しています。
東洋医学では、人間の身体も自然の一部として捉えます。当院でも、気候の変化と、その日の身体の状態を照らし合わせながら施術を考えています。
身体は、年齢や生活環境によっても変わります。
以前と同じ体力があるつもりで動き続けると、今の身体には負担になることもあります。
変化しないことを求めるより、変わったことに気づき、その時々に合う過ごし方を選ぶ。
気分についても、同じように考えられるかもしれません。
「今日は少し疲れている」
「今は一人で休みたい」
そうした気持ちも、自分の状態を知る手がかりになります。
気分は、一つの形に決めなくていい
気分には、決まった形がありません。
嬉しい出来事があれば喜び、つらい出来事があれば悲しむ。腹が立つ日もあれば、誰かの言葉で気持ちが和らぐこともあります。
気持ちが動くことで、一つの出来事だけに意識を奪われず、別のことへ目を向けられる場合もあります。
反対に、怒りや不安、考え事が頭から離れず、休む時間にも同じ思いが続いていると、心も身体も疲れてしまいます。
いつも明るい気分でいなくてもよいのだと思います。
その感情で一日がいっぱいになるほどつらいときは、無理に気持ちを変えようとするより、まず休むことが必要な場合もあります。
東洋医学で考える、五つの感情と身体の関係
東洋医学では、感情を「怒・喜・思・悲・恐」の五つに分け、五臓の働きと結びつけて考えます。
ここでいう五臓は、現代医学の肝臓や心臓などと同じ範囲を指すものではなく、心身の働きを含めた東洋医学の捉え方です。
怒りと「肝」
肝は、気の巡りや筋の働きなどと関係すると考えます。
怒りや緊張が続くときには、イライラだけでなく、頭痛やめまい、筋のこわばりなど、身体の変化にも目を向けます。
喜びと「心」
心は、精神活動や眠りなどと関係すると考えます。
喜ぶこと自体が悪いのではありません。楽しいことでも、興奮が強く続いて休めなくなっていないか、眠りが乱れていないかを確かめます。
思いと「脾」
脾は、胃腸の働きや、身体を養うことと関係すると考えます。
考え事や思い悩む時間が長いときには、食欲や胃腸の調子、身体の重さ、疲れやすさなども一緒にみていきます。
悲しみと「肺」
肺は、呼吸や皮膚などと関係すると考えます。
悲しみが深いときには、ため息が増えていないか、呼吸が浅くなっていないかなど、身体に表れる変化にも目を向けます。
恐れと「腎」
腎は、成長や生殖、身体を支える力などと関係すると考えます。
恐れや不安が続くときも、気持ちだけで捉えず、疲労や腰まわりの状態などを含めて、身体全体を確かめます。
これらは、感情だけから病気や臓器の異常を判断するものではありません。
心の状態を身体と切り離さずにみるための、一つの手がかりです。
感情をなくすより、とらわれ続けないこと
怒りも、喜びも、思いも、悲しみも、恐れも、私たちに備わっている感情です。
どれかを感じる自分が悪いわけではありません。
悲しいときに、無理に前向きになろうとする。腹が立っているのに、何も感じていないふりをする。
そうして気持ちを押し込めることが、かえって負担になる場合もあります。
一方で、同じ出来事を何度も思い返し、食事中も、眠る前も、その感情から離れられないこともあると思います。
気持ちの動き方や、落ち着くまでにかかる時間には個人差があります。
感情が短時間に変わるか、長く続くかだけで、「感情豊か」「情緒不安定」と分けられるものでもありません。
変化の速さよりも、今どれくらいつらいのか、眠りや食欲、暮らしに影響が出ていないか。そうしたことが、今の状態を知る手がかりになります。
外を少し歩く。
食事をとる。
身体を休める。
信頼できる人に話す。
気持ちを切り替えることが難しいときにも、身体や過ごし方から働きかける方法があります。
なお、気分の落ち込みや高ぶりが強く、眠れない、仕事や家事ができないなどの支障があるときは、自然な気分の変化だけと捉えず、医療機関へ相談してください。
気分の変化を、自分を知る手がかりに
気分が変わってもいい。
昨日と今日で、感じ方が違ってもいい。
怒る自分も、喜ぶ自分も、思い悩む自分も、悲しむ自分も、恐れる自分もいる。
その一つだけで、自分自身を決めつけなくてよいのだと思います。
さまざまな感情を通して、自分を知る。
疲れたときには、休んだり、身体を動かしたり、人の手を借りたりする。
気分の変化を責めるのではなく、今の自分に合う過ごし方を選ぶ手がかりにしていただけたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本日も皆様にとって素敵な1日になりますように。
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気持ちの変化とともに、眠りや食欲、身体の緊張なども気になっている方へ。当院では、身体の状態と日々の暮らしを伺いながら施術を行っています。
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