これまでの春から夏にかけて、植物が外へ向かってぐんぐん成長するように、私たちの意識も自然と外へ向いていました。
振り返ると、外へ出かけ、人に会い、さまざまな景色や食べ物、情報に触れる機会も増えていました。
春から夏は、身の回りにあるものや、身体の中へ取り入れるものが自然と増えていく季節です。
9月になり、秋の風が吹き始めた頃、改めてスマホの中を確認してみました。
春から夏に撮った写真や動画、保存した情報があふれ返り、ストレージもいっぱいになっていました。
そこで、写真を一枚ずつ見返し、残しておきたいものと、もう手放してもよいものを少しずつ整理しています。
秋は、整理の季節です。
それは、私たちの暮らしの中だけではありません。
実は自然界でも、秋になると冬に向けた整理が始まります。
自然界でも、秋は冬に向けた整理が行われている
秋になると、木々の葉が色づき、やがて地面へ落ちていきます。
葉が落ちる様子を見ると、どこか寂しさを感じるものですが、落葉樹が葉を落とすのは、冬の寒さや乾燥から身を守り、エネルギーの消耗を抑えるためです。
そして、役目を終えた落ち葉も、時間をかけて土へ還り、次の季節に植物が育つための栄養になります。
秋は、何かを失う季節ではありません。
今は必要のないものを手放し、大切なものを守りながら、次の季節へ向かう準備をする季節です。
そのように、秋に整理をしておくことで、冬は休むことに集中できます。
東洋医学では、人間も自然界の一部であり、季節に合った暮らしをすることが、心身を健やかに保つことにつながると考えます。
冬は、外へ向かって活動するよりも、身体を休ませ、エネルギーを内側に蓄える季節です。
植物が成長を止め、冬眠する動物が活動を休むように、人間も冬は無理に動き続けず、休みながら次の春に向けて力を蓄えます。
だからこそ、秋のうちに必要のないものを一つずつ手放し、冬にきちんと休める状態へ整えておくことが大切です。
自然界を観察していると、その季節に人間が何をするとよいのかが分かってきます。
夏に取り入れたものを、秋に整理する
春から夏にかけて増えた衣類や持ち物、詰め込み過ぎた予定、増え続けた写真や情報。
夏の勢いのまま、すべてを抱えて次の季節へ進もうとすると、暮らしも身体も、どんどん重く窮屈になっていきます。
整理とは、必要なものと不要なものを分け、今はもう必要のないものを手放すこと。
整頓とは、残したものを使いやすい状態に整えることです。
何でも捨てればよいわけではありません。
今の自分に必要なものは何か。これからも大切にしたいものは何か。
一つずつ見直しながら、残すものを選び直していきます。
手放すことで、次のものを受け取るための余白が生まれます。
東洋医学でみる、秋と「手放すこと」
東洋医学では、秋は「肺」と関わりの深い季節と考えます。
肺は、呼吸を通して新しい空気を取り入れ、身体に必要のないものを吐き出します。
私たちは、息を吸うことだけでは生きていけません。
一度きちんと吐き出すからこそ、また新しい空気を取り入れることができます。
秋に身体を動かすことにも意味があります。
身体を動かすと、呼吸が深くなり、汗も出るようになります。
夏の間に無意識にため込んだ余計なものを、呼吸や汗とともに外へ出していく。
秋のスポーツには、ただ身体を鍛えるだけではなく、身体に残っている余分なものを削ぎ落とし、冬に向けて整えていく意味もあります。
また、東洋医学では、肺と大腸は「表裏の関係」にあり、互いに関わり合っていると考えます。
肺が呼吸によって不要なものを外へ出すように、大腸も身体に必要のないものを、便として外へ出す働きを担っています。
女性の身体であれば、毎月の生理も、身体の中で行われる整理の一つです。
一定の周期で血を身体の外へ出し、また新しい周期に向けて準備を始めます。
呼吸や汗、排便、生理は、それぞれ違う働きをしていますが、身体にため込まず、外へ出すという点では共通しています。
秋は、身体がきちんと外へ出せているかを見直す季節です。
※生理を通して身体の状態を知ることについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

春夏から秋冬へ、身体を切り替える
春から夏は、外へ向かって活動し、さまざまなものを取り入れ、足していく時期です。
一方、秋は必要のないものを手放し、冬は身体を休める時期です。
春夏と秋冬では、身体が行うことが真逆になります。
夏の勢いのまま動き続け、取り入れ続けた状態で秋を迎えると、身体はうまく次の季節へ切り替わることができません。
特に頑張り屋の方は、動き続けることは得意でも、立ち止まることや、手放すこと、休むことが苦手な傾向があります。
大切なのは、動くことと休むこと、取り入れることと外へ出すことのメリハリです。
季節が変われば、身体の過ごし方も変えていく。
秋は、夏の間に増えたものを少しずつ削ぎ落とし、冬に向けて身体を切り替えていく季節です。
足さず、いつもの暮らしを丁寧にする
身体を整えようとすると、新しい健康法や身体に良いものを、つい足したくなるものです。
しかし、秋に必要なのは、さらに何かを足すことではありません。
今ある暮らしを見直し、普段行っていることを、一つひとつ丁寧に行います。
養生も、たくさん並べる必要はありません。
この秋は、次の三つを意識してみてください。
1.必要のないものを、一つずつ手放す
夏の間に増えたものを、一度にすべて整理する必要はありません。
冬を迎えるまでの時間を使い、今の自分に必要のないものを、一つずつ手放していきます。
写真でも、持ち物でも、予定でも、情報でも構いません。
何でも捨てるのではなく、一つずつ見直しながら、今の自分に必要なものを選び直します。
2.旬のものを、よく噛み、腹八分目で食べる
暮らしを丁寧にすることと、もう一つ、この時期に大切にしたいのが、旬のものを食べることです。
その土地で、その季節に採れたものをいただく。
秋には、きのこやネギ、大根、れんこん、白菜など、身体を温めてくれる旬の食べ物が身近にたくさんあります。
身体に良いといわれる高級な食材や、特別なサプリメントを探さなくても、自然はその季節の身体に必要なものを用意してくれています。
旬のものを、丁寧によく噛んで、食べ過ぎず腹八分目でいただく。
どれも当たり前のことのように感じますが、その当たり前のことを丁寧に行うことが、身体を整える基本です。

3.夜はスマホを置き、休む支度に入る
夜になったらスマホを置き、身体も少しずつ眠る支度に入ります。
ご飯を食べるときは、スマホを見ない。
お風呂には、スマホを持ち込まない。
眠る直前まで、情報を取り入れ続けない。
食べる時間を、食べるための時間に戻す。
身体を温める時間を、休めるための時間に戻す。
眠る時間を、眠るための時間に戻す。
スマホを置くことも、何か新しい養生を足すことではありません。
すでにある時間を、本来の時間へ戻すことです。
秋に整え、冬は休む
秋に必要なのは、何かを増やすことではなく、今あるものを見直すことです。
夏の間に増えたものを一つずつ整理し、今の自分に必要のないものを、時間をかけて少しずつ削ぎ落としていく。
そうすることで、自分にとって本当に必要なものや、大切にしたいものが見えやすくなります。
一度にすべてを変える必要はありません。
今日は不要な写真を数枚消してみる。
明日は、詰め込み過ぎた予定を一つ見直してみる。
旬のものを丁寧に食べ、夜になったらスマホを置いて、身体を休ませる。
そのような小さな積み重ねが、暮らしと身体に余白をつくります。
秋のうちに、必要のないものを一つずつ手放しておく。
そして冬になったら、無理に動き続けず、身体を休ませ、次の春に向けて力を蓄える。
自然界の流れに寄り添いながら、少しずつ冬を迎える準備を始めていきましょう。









