どうして食事は大切なの?現代は食事で不健康になる時代。

「体は食べたもので出来ている。」

誰でも一度は聞いた事のあるフレーズ。

そんな当たり前のこと、分かっているし知っている。

そのような方がほとんどだと思いますが、
現代は特に、この食べるものがより一層心や体に影響する時代に突入していると日々感じております。

昔も今も健康の基本は”食べこと”に違いはありませんが、昔と現代の不調にはある決定的な違いがあります。

私は普段から当院に来て下さっている患者さんには食事のアドバイスをお伝えしているのですが、そもそも何故私が食べ物の重要性をこんなにもお伝えしたいと感じているかと言うと、現代の食べ物と人々の心身の不調には、切っても切り離す事の出来ない理由があるからです。

現代に生きる私達が、昔よりも一層「食事」に気をつけなければならない理由があります。

それではまず初めに、昔の不調の原因と現代の不調の根本的な原因を比べてみましょう。

昔の不調

昔の主な不調の原因は首凝り、肩凝り、腰痛など肉体的な疲労からくる不調がほとんどです。

昔は現代のように食、交通機関、生活にまつわる電化製品など、ありとあらゆるものが発達した便利な時代ではなかったので、仕事や家事、育児、あらゆる面において体を使うことを主体として生活を送っていました。

その為、主な体の不調の原因のほとんどは肉体的な疲れによるものが原因だったのです。

また、現代のように利便性が高くない時代は、空調設備なども充分に整っていないことから、暑い寒いなどの春夏秋冬、各季節に起こる風、暑さ、湿気、乾燥、寒さなどの天候の影響を体がダイレクトに受けやすいというのも肉体的な不調が起こる原因の1つでした。

現代の不調

昔の不調は肉体的疲労や天候の影響など、あくまでも、体が直接ダメージを受けた事による不調が多かった一方で、現代による主な不調の原因は、「食べ物」による影響が圧倒的に多い時代です。

時代は肉体労働から精神労働(頭を使うことが主体の働き方)に変わり、肉体的な疲れは皆無と言って良い程なくなる一方で、私達人間が利便性を追求していくなかで最も大きく変化した事の1つに食事があります。

現代は、季節関係なくありとあらゆる食材が手に入り、スーパーやコンビニに行けば時間関係なく好きなものを好きなだけ食べられる時代です。

それに伴い、現代の忙しい人々に欠かせない時短かつ簡単に食べられる加工食品等が急激に増えました。

時短かつ簡単に料理をつくることの出来る○○の素、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、レトルト食品、インスタント食品、挙げたらきりがない程、加工食品にまみれた時代が現代の食事の基本であり、当たり前の時代です。

これは決して言い過ぎということではなく、もしも「加工食品以外を食べて生活して下さい。」と言われたのであるなら、逆に何を食べたら良いのか分からない。そのように方も実際は多いと思います。(かつての私もそんな感覚をもっていた1人です。)

しかし、それほどまでに今や当たり前に日々口にしている加工食品等には、私達が肉体労働主体の時代には得られていた栄養が不足しているどころか、現代の方々が心と体の不調を引き起こす根本の原因を引き起こしています。

日本人の食文化と季節

少し余談になりますが、元来日本人は昔からこの小さな国、資源の少なく自然災害の多い国で「季節と共に調和し過ごすこと」を大切にしてきた民族です。

例えば、東洋医学の考えに基づく季節(自然)の移り変わりを二十四の季節に分け見つめた二十四節気は、もともと農耕を円滑にする方法として活用されていました。
二十四節気を元に農作物を安定して作ることは、日本人にとってはとても重要な事だったのです。

また暦を見ても各季節ごとに開かれる行事、日本人独自の文化、俳句や季語などの文学や詩歌、芸術、美術においても季節というものが高い割合で取り入れられています。

そのように、日本人はありとあらゆる面において「季節と自然」を大切に育んできた民族です。

そしてこの食事においても「各季節にとれた旬の食材を頂く」という事を本来は大切にしてきたように思います。

春は春の食べ物、夏は夏の食べ物、秋は秋の食べ物、冬は冬の食べ物を頂き、季節の栄養を取り入れ心と体を養う。

そんなことが、日本人の心や体を健やかに保つ知恵として自然と生活の中に溶け込んでいました。

もちろん、日本と同じように四季があり季節のものを頂くという風習がある国も存在します。

しかし、これほどまでに食事、文化、芸術、文学など、ありとあらゆる場面で季節を取り入れ、発展してきた国は日本の他ないと思うのです。

何故季節の旬の食材を食べることが大切なのか

各季節で獲れる旬の食材には、その食材に適した環境下で育つので、栄養価が高く成長も早い。
そしてその分農薬量も少ないです。

例えば冬のキュウリと夏のキュウリは夏のキュウリの方が色も濃く、太さもしっかりしていて水々しく美味しいです。

東洋医学では、旬の野菜を春夏野菜と秋冬野菜を大きく2つに分けます。

春夏は土の外にある体を冷やす野菜を食べ、秋冬は土の中にある体を温める野菜を食べます。

例えば、春夏は気温も高いので、トマトやキュウリ、茄子などの体を冷やす野菜をしっかり食べる事により体の中をさっぱりさせますが、逆に春夏にネギや大根、白菜などの体を温める野菜を主体に食べてしまうと体の中に熱がこもり、熱中症や夏バテなどを引き起こしてしまう原因となります。

そのように旬の食材を頂くということには、私達の体を各季節に順応させ、各季節で現れやすい不調を防ぐと言う意味が含まれています。

食べ物からくる不調は取れづらい

何度も言いますが、体は食べたもので出来ています。

食べたものが心と体の栄養となり、現在の自分自身の様子を映し出しています。

現代では、心と体をつくる身体の土台にとなる旬の食材が見離され、体本来の栄養を養うことが難しくなった今、年中不調に見舞われ調子が優れない方々が赤ちゃんから老人まで続出しています。

本来私達の心や体を守る為の食文化を無視し、
加工食品で栄養を満たす生活。

それらを口にすることに疑問を持たない位にまで当たり前となってしまった私達の食生活は、月日と共に積み重かった地層のように私達の体にこびりつき、頑固に体へと蓄積してゆきます。

食べものは体を作る土台。

いくら食事以外の方法により外側から整えようと試みても、まずは食事により身体の内側を整うことが出来なければ、現代は昔と異なり不調が取れづらい時代です。

一時的に心や体を楽にしてくれるサービスは世の中には沢山溢れていますが、食事は日々の積み重ねであり一生ものの健康法です。

これからもっと、食べ物による不調が多くなる


今後はより利便性が追求され、加工食品などの手軽に食べられ食事が今よりも増えることと思います。

赤ちゃん、子供から大人まで、食事から起こる不調が当たり前の時代に突入します。

自ら気付こうとしなければ、健康を損なうものを当たり前に口にしてしまう。そんな時代だからこそ、今一度食事の大切さを見つめ直す必要性があると思うのです。

私達が今出来ること

私達ができる事。それは、自然か不自然かを考えること。

一見不可能な事の様に感じますが、それは決して難しいことではありません。なるべく旬の食材を意識し、自然な製法でつくられた調味料を使う。

まずはそこから行われることをおすすめします。

自然なものは、口に入れた後すぐに味が広がるものというよりは、何か物足りないかな?そんな味。

それが、体に優しい、体にこたえない味になります。

自然を見て、過ごし方と食を学ぶ


かつての日本人が二十四節気、季節の移り変わりを意識し日々を生活していたように、自然の様子が私達がどう過ごすと心身が健康になれるのかを教えてくれます。

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春は発生。新芽が出る時。
人間は、少しずつ体を動かし準備をする季節です。
体を動かす際に重要な肝臓を養う酸味を頂きます。

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夏は成長。植物が大きく繁茂する時。
人間は、活発に外に出て太陽を浴びる季節です。
手足を動かす事に重要な胃腸を養う甘味を頂きます。

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秋は収斂(しゅうれん)。木の葉は落葉し、幹に栄養を蓄える時。
人間は、栄養をとり冬の準備をし蓄える季節です。
不要なものは捨て、必要なものを蓄える代謝を高める事に重要な肺臓を養う辛味を頂きます。

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冬は収蔵(しゅうぞう)。
じっと寒さに耐え、凌ぐ時。
人間は、家でゆったりと過ごし心と体を落ち着かせる季節です。
寒さから身を守る腎臓を養う塩味を頂きます。
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このように、自然の様子と私達の心と体の様子はリンクしており、自然を見つめると自ずと私達がどう季節と順応しながら暮らしを行えば良いのかが分かるのです。


私達は植物や動物よりもはるかに発達した脳をもった為、つい人間だけが特別なように思いがちですが、自然界に生きる植物や動物達となんら変わらない自然界の中で生きているうちの1人です。

むしろ、自然の大地の中で暑さ寒さに耐え忍びながらも逞しく生き抜く自然界の生き物全てが、私達がどう季節と寄り添い過ごしてゆけば良いのかを教えてくれます。

鍼灸は、体の方向性を見直す指針

昔と現代、体を作る土台の”食事”が変化してしまった今、不調を解決するには食事と鍼灸。両方からのアプローチが必要だと感じております。

食事は患者さんが自身で行う施術。
鍼灸は、身体の方向性を定める東洋医学の施術になります。

実は、あまり知られてはいないのですが本来の鍼灸施術の目的は「その季節に順応した体を作ってあげること」です。
例えば前述したように東洋医学では夏に体を冷やす食材を食べる理由は、暑さから身を守る為に体を冷やす食材を食べることにより外と内のバランスを保ち夏に順応した体作りを行おう。と言う意味が含まれています。

これらと同じように、鍼灸施術も体にあるツボを使い、本来夏の体になっていなければならないのにも関わらず、冬の体になっているのであれば、汗がかけるようさっぱりとした夏の体になるよう促します。

旬の食材も、鍼灸も目的は全て「その季節に順応した体を作ってあげること」

夏であるのに冬の体であること。
秋であるのに春の体であること。
冬なのに夏の体であること。
春であるのに秋の体であること。

このように、季節と体との不一致が不調を引き起こします。

旬の食材も鍼灸も、人々の体が間違った方向に進むことを防ぐ為の指針だと私は考えています。

そして春夏秋冬、各季節に順応した体作りを行い、季節と体が一致したその先に、本当の意味での心身共に健康である自分自身へと変化してゆくのです。

最後に

食事は人生の一部。

だからこそ、それを正すことは自分自身を否定されたような悲しい気持ちにもなるかもしれません。

私も鍼灸師として、きっと食事の事を言わず施術さえ行っていれば患者さん自身ももっと気楽に過ごせるのかなと葛藤したこともありました。

しかし、私が鍼灸師を志した際、自分自身で決意したことがあります。

それは、その場凌ぎの局所治療ではなく根本治療を行いたい。良くなるではなく、完治を目指すこと。

残念ながら、一時的に良くなることと、完全に症状が治ることは異なります。

もちろん神様ではないので、全ての病を治せるなんて思ってもいないですし、自分自身が有能だとも思っていません。

しかし、東洋医学を学ぶ上で切っても切り離す事のできない食事。

それらを現代の食事を照らし合わせた時に、やはり食事の重要さをしっかりと伝えなければいけないと感じるのです。

そして、今でははっきりとその事が鍼灸師としての私の役割の一つだと感じています。

自分自身、家族、そして未来の為にも。

話が長くなりましたが、それが私が日頃から患者さんにお伝えしている食事アドバイスやyoutube内で料理動画を発信する理由になります。

ここまで読んで頂いた方々、ありがとうございます。
1人でも多くの方に届きますと幸いです。

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