熱中症、夏バテ予防。夏の養生法

早くも夏。
そして、7月19日からは「夏がもっと深まる季節」土用に入りました。

土用は、一言で言うと夏の最終形態。

東洋医学では、夏を表現する言葉に「成長」の言葉がありますが、植物で例えるなら夏の土用は植物が今まで以上に繁茂し、ぐんぐん成長する季節です。

自然界のあらゆる生き物がどんどん旺盛に、大きく広がるイメージです。

そんな夏の土用は今年は7月19日から始まり、8月6日までの約2週間続きます。

先程もお伝えしたように、夏の土用は成長を表す夏の最終形態なので、外気温が高くなるにつれ、湿気が多く発生します。

そんな夏ならではの気温の影響により、熱中症や夏バテにかかる方が毎年多くいらっしゃいます。

しかし、その一方で熱中症や夏バテにならない方もいらっしゃる。

では、熱中症や夏バテになりやすい方とならない方、
その違いはなんなのか。

今回はその理由と対処法を東洋医学的視点から書き綴りたいと思います。

熱中症や夏バテの原因

熱中症や夏バテになりやすい方の体を確認すると、ご自身に自覚があるかどうかは別として、体の火照りがある方が多いです。

火照りがあるとご自身で体感している方は、年齢関係なく「私は更年期なのかしら。」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、“体が火照る、熱い”には原因が2つあります。

1つめは、「おしっこやうんちの出が悪いこと。」そして2つめは、「汗がかけないこと。」です。

…..??

おしっこやうんちが出る事と汗がかけないこと。
これらと夏バテや熱中症は何が関係しているの??

そう思われる方もいらっしゃると思いますので、詳しく説明してゆきます。

排泄と汗、熱中症と夏バテの関係

おしっことうんち、そして汗(今後、何度も連発します)の共通点は「体の不要なゴミを出すこと。」

それぞれ出す場所は異なりますが、

おしっこやうんちの場合は下から出す作業。

汗の場合は皮膚の上から出す作業。

それが

“上から出すか、下から出すか。”

場所が違うだけで、どちらもゴミ出し作業をする事には変わりません。


そして、東洋医学ではこれらのゴミ出し作業には
「胃腸」が深く関係しています。

結論から言うと、“胃腸の働きが良いか悪いか”
それが、熱中症や夏バテにかかりやすい人とかかりづらい人の違いになります。

胃腸の働きとは

胃は食べたものを消化し、腸で栄養を吸収し体全体に行き渡らせた後、不要なものをうんちとして外に出します。

もっと簡単に言ってしまうと、口から物が入り、肛門から出るまでの過程。

取り入れたら出す。
まさに、1本のホースです。

胃腸と夏バテ、熱中症の関係性

胃腸の大切な仕事は、取り入れて出す。

しかし、これらの働きがスムーズにいかなくなると、胃腸は本来の仕事、ゴミ出し作業を進めることが出来ないので胃腸の働きが悪くなります。

ゴミ出し作業の基本、汗をかくことやおしっこやうんちを出すことがスムーズでないと、出口のない体には余分なゴミが溜まり、上手く外に発散することが出来ません。

体の中のゴミが上手く出せない体は、夏の体の熱も上手く出すことが難しいので、結果的に余分なものを発散出来ない体は、熱中症や夏バテを引き起こしてしまいます。

また、おしっこやうんちの出が悪い方は体の火照りや熱が生じやすいですし、逆に熱や火照りを感じる方はおしっこやうんちの出も悪い傾向にあります。

改めて、胃腸は下からのゴミ出し作業。
汗は皮膚からのゴミ出し作業。

これらの共通点は、「胃腸」です。

熱中症や夏バテを解消するには、ゴミ出し作業の原点とも言える胃腸を強化することがとても重要なポイントになります。

胃腸が弱い方は、土用に気を付ける

土用は春夏秋冬の季節の変わり目にあるクッション剤。
春の土用、夏の土用、秋の土用、冬の土用と年に4回あります。

東洋医学では、土用は特に胃腸の働きが停滞する期間です。

各季節とそれに対応する内臓を表したのが下記になります。

【各季節に対応する内臓の関係】

春→肝臓
土用→胃腸
夏→心臓
土用→胃腸
秋→肺臓
土用→胃腸
冬→腎臓
土用→胃腸

東洋医学では夏の土用は最も胃腸の働きが落ちやすい期間なのですが、その中でも「夏の土用」は特に注意したい季節となります。

湿気で胃腸の働きが悪くなる

元々胃腸が弱い方は気温や湿気が多くなる、夏の最終形態「夏の土用」に不調が現れやすいです。

何故なら、夏の土用は他の春秋冬の土用と比べ、圧倒的に湿気が多いからです。

実は、東洋医学では湿気が多過ぎるとダイレクトに胃腸を傷つける原因となります。

例えば梅雨の日に胃腸の調子が優れない、だるい、浮腫む等と不調を感じる方が多いのは、湿気が影響しているから。

それらは、胃腸が不調になった際に起こる症状の1つなのです。

改めて、夏の土用は1年の中でも湿気がダイレクトに体にふりかかる季節なので、元々胃腸の調子が優れない方や弱い方は「夏の土用」に注意が必要です。

熱中症や夏バテ以外に出やすい夏の不調

胃腸が弱る事で熱中症や夏バテにかかりやすいという話をしましたが、その他に夏に現れやすい不調として、関節の痛みが挙げられます。

何故かと言うと、湿気は関節に留まりやすい特徴があるからです。

関節には首、膝、腰、など様々な箇所がありますが、その中でも夏に圧倒的に出現しやすい関節の痛みは痛風です

通風は、よく観察すると関節に腫れが確認出来ます。
それは、夏の熱(熱邪)と夏の湿気(湿邪)が合わさって起こる夏を代表する関節痛の1つなのです。

普段、痛風の自覚がない方でも意外と足の第二関節や甲側などが腫れている方もいらっしゃいます。
これらも東洋医学的に見ると「通風」に分類されます。

そして、重要なのは痛風も元を辿れば「胃腸」が関係していること。

胃腸を整えることで、夏の湿気で悪化する関節の痛みや前述した熱中症、夏バテ等を軽減することが出来ます。

胃腸の働きが悪くなる原因(内と外)

胃腸の働きが悪くなる原因には、主に体の内側から起きる原因と体の外側から起きる原因の2つがあります。

胃腸の働きが悪くなる内側からの原因には、湿気の多いものを日常的に食べること。

実は湿気は食べ物からも発生します。
(現代は、昔と異なりこの食べ物による湿気問題が不調の大半を占めています)

味の濃いもの、甘いもの、発酵食品等これらは全て体の内側に湿気を生じ、胃腸の働きを悪くする食べ物となります。特に夏はイベントも多く、外へ出る機会も多いと思います。
春秋冬と比べ、自然と体を動かす事も増えますね。
そうすると、人は味の濃いものや甘いものを求める傾向にあります。

しかし、それらは結果的に身体の中に湿気を生じさせ、胃腸の働きを停滞させる原因となります。

次に胃腸の働きが悪くなる外側からの原因は、湿気からくる体へのダメージです。

先程前述したように、湿気が多いと胃腸の働きが停滞します。

特に日本は海に囲まれているので、この湿気の影響をより多く受けやすいです。

夏の胃腸の整え方4つ(夏の養生法)

それでは、どのようにしたら胃腸を健やかに保ち、夏の体を快適に過ごすことが出来るのでしょうか。

主に大切な4つの方法をお伝えします。

1,水分は最低でも1,5リットル。

人間が何もしなくても、失われる水分の量は1日1リットルと言われています。

人それぞれ活動量により必要な水分量も変化しますが、家事や仕事、育児など、日々誰でも何かしらの活動があり、1日中寝る以外何もしないという方はいらっしゃらないと思うので、それを踏まえた上で大体最低でも1日1,5リットルを目安とした水を飲まれることをおすすめします。

また、その際の注意点の1つ目はあくまでも水を1,5リットル飲むこと。

コーヒーやお茶などの飲み物はお好きに飲まれても構いませんが、基本の水分1,5リットルには含まないので、コーヒーやお茶等の嗜好品以外の純粋な水を1日1,5リットルを目安に飲まれると良いです。

水を飲む事はうんちやおしっこ、汗を出すゴミ出し作業を促し、胃腸の働きを高める為にも大切な事です。

2つ目は、水の温度は45度から50度を目安に飲む事。
水の温度45度から50度は、胃腸の働きが最もスムーズに働く最適な温度になるので、暑い夏の日でも冷たいものを控えることをおすすめいたします。

2,野菜とタンパク質を多くとる。

夏は湿気が多く胃腸の働きが停滞し、食欲が落ちやすいのですが、自然界を観察すると良く分かるように、草花などの植物は水や栄養をどんどん吸収し大きく育つ季節です。

人間も自然界の中で生きているので、自然界と生き物と同じように、多くの水分や栄養が必要な季節になります。

自然界の夏を表す言葉に「成長」の言葉があります。人間も水分や栄養を多く摂ることが、特に夏を健やかに過ごす為の養生法です。

3,甘いものを控える。

東洋医学では、甘いものを摂り過ぎると土(胃腸)剋水(腎臓)と言って、人が生きる上で重要な生命力を司る腎臓の働きが落ちると言われています。

生命力=生きるための貯金

腎臓の生命力がなくなると、人は死ぬと言われているように、甘いものを摂り過ぎると、この生命力の貯金は削られ、慢性的な疲労感、足腰の弱り、抜け毛や白髪など、健康はもちろん女性にとって気になる美容にも深く影響します。

誰でも生きている以上、年齢を重ねる事に日々生命力が削られ、生きる為の貯金は少なくなりますが、それらの貯金が多ければ多い程、体は元気に精力的に動く事が出来ます。

例えば、年齢が同じ方でも、元気な人と病気がちな人がいるのは、この腎臓に蓄えられた生命力、生きる為の貯金が多いか少ないかの違いになります。

そして、生きる為の貯金、生命力をダイレクトに削ってしまうのが甘味です。

特に夏は甘味による体が受けるダメージも強いので、甘いものを控えることで胃腸を健やかに保ち、腎臓へのダメージを軽減することができます。

4,沢山動き、活動的になる

草花や植物が外へ向かって大きく育つように、人間も沢山動き、体を動かす事が夏の養生法となります。
実際に夏は外へ出かけるイベントや祭り事が多いのも、体を外へと向かわせ、発散させるという昔の人の健康の知恵です。

また、体を動かし手足を動かすことは東洋医学では胃腸と関係しているので、体を動かすことで胃腸の働きも良くなります。

ウォーキングやランニングなどは特に夏に最適な運動です◎

心のゴミ出し作業も大切って話(余談)

いつもお話しするように、心と体は繋がっています。

今回は胃腸の調子を整えて、身体のゴミ出し作業を促す事で夏バテや熱中症にならないようにしよう。

というお話しがメインでしたが、体のゴミ出し作業も大切ですが、心のゴミ出し作業も健やかな体を保つ為にはとても重要な事です。

その1つに、言いたいことを言葉にして発する
というのがあります。

体が食べたら出すように、心で思ったことを吐き出す。

いくら食べ物に気を使っていても、心のゴミ出し作業が出来ずにいると、体の不調を引き起こすパターンも多くあります。

心と体。どちらも切っても切り離せないもの。

両方の歯車が噛み合うと、身体の調子はぐんと良くなります。

最後に

何でも受け入れるだけではなく出すこと。

どちらか一方的ではなく循環させること。

そんな、当たり前なようで難しいこと。

しかし、生きる上でかかせない2つのこと。


吸って吐くこと、
取り入れて出すこと、
思った事を吐き出すこと、
始まりから終わり、また始まること、
ありとあらゆる自然界で起きること、全ては循環している。


決して停滞せず、循環する。

それが心と体を保つことはもちろん、生きることの原点でもある。

何かに立ち止まり、心にひっかかりを持ちながら、もんもんと日々を過ごすのはきっと自然界では人間だけ。

迷っても悩んでも良い。
決して停滞だけはせず、前に進み、循環してゆこう。

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