いよいよ8月も終わりますね。
外は湿気がすごいですが、風はだんだんと秋の風に冷たく変化していて日に日に秋が色濃くなっているなぁ、と感じております。
それにしても、今年の夏は本当に暑かったですね。
私は普段から日記を書いているのですが、先日日記を見返してみると今年は5月の中旬まで15度前後と寒くストーブを付けて過ごしていたようなのですが、その数日後にはなんと28度〜30度を超える真夏が始まり、現在まで続いていました。
夏の気温は年々上昇していますが、今年はあまりにも夏へと切り替わる準備期間が短かかったのと、長期間猛暑にさらされたことで、改めて体に堪える夏だったなぁ、と振り返っているところです。
…と、過去形で終わらせたいところではありますが、夏に溜まった体の疲れは季節を跨いだ秋に現れやすいです。
夏の間は毎年元気に過ごすことが出来るという方も、立秋に入ったあたりから、徐々に体調を崩される方も少なくありません。
今年は特に準備期間がなかった事や猛暑が長く続いた事で、ご自身が思う以上に体に疲れが溜まっている方も多いので、充分に気を付けていきたいところです。
また、毎年同じようなことを口酸っぱく言ってしまっているのですが、夏の疲れを癒す事や、秋を健康的に過ごす為には秋の過ごし方がとても大切です。
秋の過ごし方は「落ち着いて、リラックスして過ごすこと。」
夏は外へ向かって活動的に過ごされていた方も、秋は意識を自分自身の内側へ向け、落ち着いてリラックスして過ごすことがとても大切な季節になります。
しかし、患者さんの中には普段からリラックス自体が苦手という方や、アロマやヒーリングミュージックなど、リラックスに良いと言われている事を日常生活に取り入れてみても、リラックスしたという感覚が沸かない。といったお声も頂きます。
また、リラックスを促すストレッチやヨガなどであっても、逆に疲れを感じてしまうと言う方も多いです。
実はそのような原因には、リラックスを行う際に重要な”体にとって良い事と自分の心で考える体にとっての良い事”にズレが生じているからかもしれません。
今回の記事は、夏に溜まった疲れをとりたい方、秋を健康的に過ごしてゆきたい方はもちろん、普段からリラックスの仕方が分からないといった方に参考にして頂きたい内容になります。
またまた伝えたい事が多過ぎて長文になってしまったのですが、少しでも皆様の為になりますと幸いです。
⚠︎文章の中には、何度も心という表現がありますが、心=頭と置き換えて読んで頂くと読み進めやすいかもしれません。
リラックスに必要なのは心か体、どちらを優先するべき?
東洋医学には、“心身一如”という心と体の繋がりを重視した考え方があります。
要約すると、心の状態は体に影響し、体の状態は心にも影響を与え、どちらも影響し合っているんだよ。と言った意味になります。
しかし現代は特に心に重きをおくことで、体の状態は忘れさられてしまっている場面が多くあるなぁ、と感じます。
私が特にその事を感じる場面は、現場で施術を行う際です。
当院には心の不調を感じて来院される方もいらっしゃるのですが、その方々のほとんどは体の不調も一緒に抱えられていることが多いです。
例えば歯が激痛で心を健やか保つことが難しいように、慢性的に体に痛みや不快感を抱えていれば、心に不調が起きますし、反対に体の調子はすこぶる良いのに心に不調を感じるという方はほとんどありません。
少し話が逸れますが、昔の人の言葉に肌が合う。腹が立つ。胸が痛い。頭にくる。など、実際は体が感情を持っている訳ではないのに、感情を体で表現する言葉が沢山あるのは、それだけ体から感じられる情報が多くあることを昔の人は知っていたからだと思います。
私自身も自分の体や患者さんの体を観察してゆくなかで、心よりもむしろ体の方がいち早く反応し、それは不快な事なのか、心地良い事なのかを的確に教えてくる事がとても多いなと感じています。
日常生活の中であまりにも心の状態に重きを置き体の状態を無視してしまうと、心と体で考える体にとっての良い事の中に大きなズレが生じることで、体にとって本当に良い状態というのが分かりづらくなってしまいます。
体は私達が考える以上に、正直で分かりやすいです。
そのような事からも、リラックスしやすい体の状態を作るには、目に見えない心にアプローチをするよりも形のある体からアプローチする方がずっと簡単になります。
リラックスは、体を緩めることから始めよう
患者さんの体を見ていくと、特にリラックスが出来ないという方は、体全体がとても硬く緊張している方が多いです。
体がある一定以上に緊張して硬くなると、筋肉や関節などの動きの幅が制限され、各内臓の働きも鈍くなり、体全体の機能が本領発揮しづらくなります。
イメージすると分かるように、緊張してガチガチに固まっている体よりも、余力があって伸び伸びしている体の方が自分自身の力を最大限に発揮しやすいと思います。
また、余白がある体というのは、様々なストレスを受け止める事のできる余裕がある体とも言い換える事ができます。
リラックスをしやすい体の状態を作るには、まずは簡単なストレッチやヨガなど、体を緩める簡単な動きを日常生活に取り入れられると良いです。
既にここまでは行っているよ。という方は、次にその際に重要なコツについてお話ししたいと思います。
ストレッチやヨガなどで体を緩めるコツ
1,物足りない範囲で行う。
まず1番に知って頂きたいのは、体にとって強い刺激は攻撃になります。
例えば、指にペンダコが出来るとします。
私はよく学生時代のテスト期間中になることが多かったのですが、ペンダコが出来る原因は同じ箇所に強い刺激がかかり続けることで起こります。
私達からすると、一見何てことのないように思うのですが、指からしてみると同じところを何度も何度も強く刺激されて嫌な訳なので、また同じような刺激からその箇所を守るように、タコを作り硬くします。それが、体にとっての精一杯の防御です。
一方で私達は体を良くしていきたいと思った時に、これと同じような事を体に対し行ってしまう事があります。
それは、ストレッチやヨガなどを自分の限界まで強く行ってしまうことです。
しかし、先程のペンダコの例と同じように、体は強く行うことで守ろうという働きが強まり、かえって体は硬く緊張し、リラックスしづらい体の状態を作り出してしまいます。
強く行うと効いた感じがするのは、強い刺激を受け続けた体が、その事が終わった後に一気に緊張から解放されることで体が軽くなったように感じるからです。
しかしそれは一時的なもので、その後かえって倦怠感や痛みなどを引き起こす原因となってしまいます。
改めて、体が1番緩むのは安心な状態の時です。
体にとって心地の良い、優しい刺激は味方であり、強い刺激は攻撃になります。
ストレッチやヨガなどを行う際には、自身が思う以上に物足りない範囲で行うことが体を緩ませるコツになります。
それが結果的に最大限に体をリラックスする事に繋がります。
2,頑張らない。
この言葉を聞いて、ドキっとした方も少なくないかもしれません。
体は頑張れば頑張ろうとすればするほど固くなり、緊張感がうまれます。
少し話が逸れますが、私が普段行っている鍼灸の施術は15分程と短いものです。
その理由は、自然治癒力を引き出す為に患者さんに過剰な刺激を加えないという理由の他に、長い間患者さんの体に接することで、「私が治す!」という強い思いによって、過剰な力が入らないようにする為でもあります。
「やってやろう。」といった気合いは悪いものではないですが、体をリラックスさせるという視点で考えた時に、頑張ることで体に余計な力が入り、リラックスの状態とは程遠くなりやすいです。
また、何事に対しても「頑張らなきゃ。」という性格の方であれば、その時間が長くなればなるほど知らずの知らずの内に過剰な力が入りやすい傾向にあります。
ストレッチやヨガなどで体を緩める際には、頑張る。というよりもリラックス、緩ませるといった感覚を大切に取り組んで頂きたいと思います。
3,心よりも体の心地良いを優先する
私達は心にとって良い事と体にとっての良い事にズレが生じることで、本来目指したい方向とは真逆の方向へと向かってしまうことが良く起こります。
先程体を緩めるコツでもご紹介した1つ目の物足りない範囲で行う事については、体は強い刺激は嫌うのに、心は強い刺激が心地良いと感じる事で、かえって体を緊張させてしまう事に繋がり、2つ目の頑張らないという事に関しても、体は余力がある状態の方が緩みやすいにも関わらず、心は全力で頑張ろうとすることで、同じく体を過剰に緊張させてしまうことに繋がっています。
それは、体が疲れている時は体にとって優しいものを食べた方が良いというのを分かっていながらも、私達の心(頭)は味の濃いものや甘い物を食べ、余計に体が疲れるという反対の事をしてしまうのと同じことです。
体は心以上にシンプルで、様々なことを私達に教えてくれます。
今まで心に重きを置いていたという方は、是非体から感じられる事も大切にして頂きたいですし、既に体に気を使っているよ。という方は、今後もより体を観察し、体にとって心地良い事を取り入れて頂きたいと思います。
赤ちゃんや動物に接するように自分にも接する。
マッサージなどを行う際に、赤ちゃんやペットにぐりぐりと強い圧で触れてしまうという方がいないように、「赤ちゃんやペットに出来ない事は自分にもしない。」ことは自分自身に触れる際にも大切です。
人にマッサージなどをしてあげる場合は優しく触れるのに、自分には強くマッサージしてしまう方も多くいらっしゃると思います。
とても些細な事のように感じますが、日頃から自分自身にも優しく触れることで、体に入っている余計な緊張が抜け体自体も緩みやすくなりますし、効果も現れやすいです。
是非赤ちゃんや動物に接するよう時と同じようにご自身にも優しく接するようにされてください。
緩めることが上手くなると現れるサイン。
体が緩みリラックスすることが上手になると、今までとは異なる体の変化が現れます。
1,優しい刺激で満足。
体は外からの強い刺激を受ければ受けるほど固くなり、緊張します。
刺激の中には、肌に直接触れる圧だけではなく目や耳から入る情報、鼻から入る香り、味覚で感じる食べ物などがありますが、その刺激量も強ければ強いほど体は緊張してゆきます。
更に、そのような強い刺激ばかりを浴び続けていると、次第にその刺激にも慣れ、もっと強い刺激を求めるようになり、感覚が麻痺します。
反対に体を緩めリラックスが上手になると、強い刺激よりも優しい刺激で満足できるようになり、むしろ優しい刺激が心地良いと感じることが多くなります。
2,自分自身からでる物音が少なくなる。
やたら自分自身から出る身の回りの音がうるさいなぁ、と感じる時は、体が緊張状態の時が多いです。
私なんかは、「静かにしなきゃ。」と思えば思うほど空回りして音が出てしまう人間なのですが、やたらと物にぶつかったり、怪我が多い日は体の緊張状態が続き、体が上手くリラックス出来ていないことが多いです。
体が緩みリラックスが上手になると、次第に自分から出る音というのも少なくなります。
3,色々なことに敏感になり過ぎなくなる。
もし、自分に向かってボールが勢いよくぶつかりそうになった時、私達は咄嗟に自分の体を守ろうとし体に力が入り、防御体制になると思います。
体は緊張状態にさらされ続けると、これ以上攻撃を受けないよう自分自身を守る為にぎゅっと体を固め防御体制になった後、様々な外からの刺激に対し敏感になります。
日常生活の中で必要以上に敏感になってしまっている時は体の緊張が続き、その緊張が上手く抜けなくなってしまう際に起こりやすいてます。
体が緩みリラックスが上手く出来るようになると、様々なことに敏感になり過ぎるということが少なくなります。
簡単な動きをコツコツと。
体を緩めようとする際に簡単な動きより、難易度の高い動きの方が良いのではないか。という気がしますが、実際にはどちらも緩ませたい目的の箇所は同じだったりします。
難易度の高い動きを完璧にこなすことに意識が向き、体を緩める、リラックスする。という本来の目的を忘れてしまうと本当の意味で体を緩ませることが難しくなってしまうので、簡単な動きを毎日コツコツと習慣化していかれる方が効果が現れやすいです。
因みに私の場合は、15分ほど体をゆらゆらとするだけの軽い体操を眠りにつく前に行っています。
また、体を緩める際には出来ればテレビなどの音を消し、自分の体に集中できる環境の中で行われるとより体が緩み、リラックス効果が高まります。
最後に。
人間は動物です。
体を通し様々なことを感じ、体を使うことに喜びを感じられます。
そして、心と体の両方を使うことで心身の健康を保つことができます。
体からすると現代はデスクワークでの長時間の固まる姿勢や、便利化による極端に体を使わない生活、慢性的な運動不足などは不自然な体の使い方になります。
体はほとんど使わず、心(頭)を使う時間が圧倒的に長くなることで、体には常に緊張感が生まれ、上手く緩めることが出来ない。発散できない。という状態が起きやすいです。
現在は本当に豊かで便利な時代ではありますが、これまで生き物が逆境に立たされ進化し続けてきたように、守られ過ぎた状況というのも動物としてはある意味不幸せな状況であるのかもしれません。
そして、この便利な時代に逆行してゆくことが、ある意味心や体を健やかに保つ秘訣なんだなぁ、なんて思わされている今日この頃です。
(この手の話になると、何時間でも語り出してしまいそうになるので自粛します(..))
とは言っても、これから仕事を辞めて自給自足をして生きてゆくことなんて到底無理だと思います。
これからも、この時代と共に生きてゆくんだと思います。
だからこそ重要なのは、心と同じくらい体にも意識を向けることです。
まずは5分、10分などとできる範囲で良いので、日常生活の中で少しずつ体に向き合う時間を設けて頂きたいと思います。
改めて、心と体。
そのどちらもバランス良く使えたら良いですね。
食欲の秋。読書の秋。芸術の秋。
色々な秋がありますが、それぞれの秋を楽しまれてくださいね。
くれぐれも、落ち着いてリラックスしながら過ごす事を忘れずに。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
本日も良い1日になりますように。