薬膳ってなに?日本の薬膳食材で心と体を整える

東洋医学に興味を持たれている方であれば、一度は耳にした事がある「薬膳。」

薬膳に使用する食材は八角やクコの実、山椒などと日常で中々手に入りにくい食材であったり、そもそも私達日本人が生まれ育ってきた過程で馴染みのない食材である場合も多いです。

それは何故かと言うと、薬膳のルーツはそもそも中医学(中国)をベースに作られた食事法だからです。

薬膳は、中国の風土や生活習慣の中で培われた心身が健康になる為の食事法ですので、中国人には馴染みのある食材でも日本人としては馴染みが少なく何となく使いづらかったり、味覚が合わないと感じられる食材だったりもします。

せっかく健康を目指すきっかけとして薬膳に辿り着き取り入れたものの、中々長続きしない。調理が難しく感じてしまう。味が何となく合わない。そんな方々も珍しくありません。

しかし、ここで忘れてはならないのは、あくまでも薬膳の本来の目的は食事を通し「健康的な体作り」「体調不良を解消する」ものになります。

実は、この薬膳の大元の考えから外れさえしなければ、日本人が馴染みのある身近な食材で薬膳料理は簡単につくる事ができます。

一言で言うならば、日本人ベースの薬膳料理です。

本日は改めて薬膳とは何?という話や、普段私が取り入れている日本人ベースの薬膳料理(漢方医学に基づく料理)の事についてをお話しします。

皆様が今まで通り馴染みのある食材を使い、健康を目指せますと幸いです。

薬膳とは

薬膳とは、中医学の考え方に基づいた食事法になります。
前述したように、中国で発展した伝統医学の中で培われた中国式の食事法になります。

中医学で特に重視されているのは、季節や体質に合わせた食材を食事に取り入れること。

その中で、食材を陰(寒性、涼性)陽(温性、熱性)の2つに分け、更に酸味、苦味、甘味、辛味、塩辛味(五味)を体質や季節に合わせ取り入れるという考えを持ちます。

漢方医学とは

漢方医学は中医学を基に日本独自で発展した伝統医学となります。良く漢方と耳にする事があると思いますが、これは全て日本の風土や気候、日本人の体質を基に培われた「日本式」のものです。

ですので、一口に言っても中医学からくる薬膳と漢方医学で考えられている薬膳の食事法とは異なるところがあります。
しかし実際の区別はかなり複雑であり、曖昧になってしまっている場合が多いです。

基本的な漢方医学の考え方

漢方医学の考え方は、「人間の体も自然の一部」という考え方を重視し、体全体の状態のバランスを総合的に見ること。

そして、心身一如(しんしんいちじょ)」と言われるように、ココロとカラダは表裏一体であり、精神面に負荷がかかると、体調にも影響をもたらす考え方も重視されています。

中医学と漢方医学の違い

中医学と漢方医学はどちらも「東洋医学」には変わりませんが、その中身が中国ベースであるのか日本ベースであるのかにより考え方が変化しています。

これは決してどちらが正しい正しくないと言うことではなく、例えば炭水化物1つとっても、日本ではお米。フランスに行けばパン、イタリアに行けば麺を主食として食べられていますね。

このように、その国の風土、気候、生活環境により同じ炭水化物でも主食とされるものが変化します。

しかし忘れていけないのは、全て炭水化物だと言うこと。

決してどれが良いとか悪いとかの話しではなく、その国に適したものが独自に変化を遂げ、発展してゆくことは極々当たり前のことです。

話は戻りまして、改めて中医学は中国の伝統医学であり、漢方医学は日本の伝統医学。

同じ東洋医学でもこの2つの違いがあることを頭の片隅に入れて頂けると、今後はより東洋医学についての理解が深まるかもしれません。

私達が簡単に取り入れられる薬膳料理とは

私が薬膳料理を作る際は漢方医学ベースの食事法。
つまり、日本の伝統医学による食事法を薬膳と呼んでいます。

因みに普段私が行っている鍼灸施術も漢方医学ベースの日本式の鍼灸施術です。

前述しましたように、薬膳の基本的な考え方は、「健康的な体作り」「体調不良を解消する」こと。

これらの考えを頭の片隅に入れ、ここから大きくぶれる事がなければ、ネットに連載されている中国式の薬膳でなくても良いと私は思っています。

もちろん、そこには中医学の食事に対する陰陽の考え方や、健康になる為に欠かせない5つの味、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味(五味)を時と場合に合わせ食事に取り入れつつも、あくまでも基本は日本の気候や風土で育った食材を使い、心と体の健康を目指すのが日本式の薬膳料理となります。

漢方医学ベースの薬膳法

基本は1年を春夏と秋冬の半分に分け、それぞれ春夏が陽。秋冬を陰に分けます。

陽が主体となる暖かい春夏は体の熱を発散させる体を冷やす生野菜を頂き、陰が主体となる寒い秋冬は体を温める根菜を頂きます。

そうすると、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味(五味)をわざわざ体質別に取ることがなくても、春夏は酸味と苦味の旬の食材が自然と多くなり、秋冬は辛味と塩辛味のある旬食材が自然と多くなることから、季節毎に旬の食材を意識し頂くだけで、各季節に不足しやすい栄養をまんべんなく食材から補うことができるようになっています。

そして、それらは1年を振り返った際に、五味を通した様々な栄養が体の中におさめられているということにも繋がります。

現代は忘れ去られつつありますが、それが本来の「旬を頂く。」と言う日本人が古来から心身の健康を保つ為に行ってきた食事法です。

今の体質<季節に合わせた体作り

時々、患者さんに「私の体質は東洋医学で言うと何タイプですか?」と質問されることがあります。

現代は、ネットで東洋医学の事について調べていくと体質診断チェックみたいなものに辿り着くことが多いです。

そんな体質についての私の答えは、体質は一定ではなく常にコロコロ変わるものだから分からないというもの。

これを見て、分からないのかい。と突っ込みを入れたくなる方もいらっしゃるかと思いますが、実際に体質は一概にこれ。と決まるものではないのです。

例えばですが、仮に「あなたは○○タイプ。」
と診断されたとしましても、その体質は四季や異常気象、その時の心や体の状態など様々な条件が重なる事で体質はいつも変化します。植物が春夏秋冬、季節に応じて形態が変わるように、一定ではないこと。それは極々自然の事です。

そしてここで最も重要な事は、体質により自分自身の不調が現れていると考えるよりも、ある一定の季節や春夏秋冬どの季節にも不調が現れているということ。

それはイコール、各季節の養生が出来ていないですよ。と言う、体のサインになります。

私が健康の為に日頃から大切だと思っていることは、自分自身の今の体質が分かる事よりも、“各季節に合わせた体つくりが出来ているかどうか”です。

季節毎に体のトラブルが起こる理由

春夏秋冬。
実は私達は同じように日々を過ごしているつもりでも、体や心は季節に応じて目まぐるしく変化しています。

例えば夏は皮膚の毛穴が開き、汗をかきやすい体になることで、夏バテにならないよう夏の体は努めています。また、夏は陽気が体に必要な季節ですので、気分も前向きになり、いつもより外に出かけたいという気持ちにもなりやすいです。

そのように、私達の心や体は春夏秋冬を健やかに過ごせるよう陰ながら頑張っているのです。

しかし、何だかいつも体調が悪い。そんな方々は、季節の養生とは真逆な生活、もしくは季節関係なく同じ日々の生活を積み重ねた結果、体が季節に対応しない体になっていることが多いです。

例えば、夏であるのに汗をかけない事から夏バテにかかりやすく、冬であるのに体が冷えているので風邪をひきやすい等です。

春から夏、夏から秋、秋から冬と全てが繋がっているので、春の体調が優れないのであれば、その体は次の夏の体調に影響しますし、夏の体調が悪いということは、もちろん秋の体調も優れず、最終的に1年を振り返った時には、いつも体調が悪く具合が悪いという体の状態に陥ってしまいます。

逆に言えば、春夏秋冬それぞれの養生をしっかり行う事により、様々に変化してゆく「体質」にも左右されない体を手に入れることが出来ます。

また、鍼灸施術本来の目的も上記と同じく
「季節に対応した体をつくること」です。

食べ物は薬。薬膳で心と体を強くする

栄養のある土と栄養のない土では実る作物の状態に差が出るように、食べ物は人間の心と体を作る源。そして、心や体にとっての薬になります。

薬膳と難しく考えなくても、季節別に身近にある旬の食材を口にすることが既に立派な薬膳です。

自然に体を健やかに保つ為の自分自身に出来る簡単な方法。そして簡単であるがゆえに、ついないがしろにしてしまうところでもあったりします。

こちらの記事を読んで、健康食材に縛られ過ぎることなく普段の食事作りが柔軟に、楽しく感じられると幸いです。

最後に

“どの食材が優れていて、どの食材が劣っている。”

実際はそんなことはなく、どの食材にもその食材に含まれていない栄養があり、全ての食材がスーパーフードです。

旬に適したスーパーフードを沢山食べ、体の中を様々なエキスパート達でいっぱいにする。

それが薬膳の本質だと感じています。

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