東洋医学的、春の土用の過ごし方

春もいよいよ終盤となりますが、皆様体調はいかがでしょうか。
気候の著しい変化により全国的に寒暖差が激しい近年ですが、最近は東京で1日に20度の気温差や、ここ札幌でも同様の気温差により体調を崩されている方がとても多いなと感じています。

そんな気候の乱高下が年々厳しい日々ではありますが、早くも4月17日から春の土用が始まりました。

土用と言えば夏の土用丑の日に鰻を食べることで有名ですが、実は土用というのは春の土用、夏の土用、秋の土用、冬の土用と年に4回あり、春夏秋冬の過ごし方の他に、「土用の過ごし方」というものがあります。


(有名な土用丑の日は、夏の土用になります。)
そして、この土用期間というのは東洋医学では健やかな体を保つ為にとても重要な期間です。

とは言っても、「土用」にピンと来ない方もいらっしゃると思いますので、本日はそんな土用の過ごし方や、そもそも土用ってなんの為にあるの?と言うお話を東洋医学の知識と交えながら書き綴りたいと思います。

土用は次の季節の準備期間

土用は季節の変わり目であり、次の季節に移る為の準備期間になります。

今年は4月17日〜5月4日の18日間が春の土用期間にあたり、5月4日から立夏(夏の始まり)に入ります。

この18日間続く土用期間には、“夏の準備をしっかり行って下さいね。”と言う意味が込められています。

土用には、次の季節に移るまでのクッションのような役割を果たし、次の季節を穏やかに送れるよう促す働きがあるのです。

夏に向けての準備期間にすると良い事

夏の養生法は、「沢山活動をすること」になります。

そんな本格的な夏が始まる前の準備期間、春の土用には夏に向けて少しずつ外へ出かける機会を増やしながら、活動を起こしてゆく準備をされると良い期間です。おすすめは、程良い疲労感を得られる40分程度のお散歩です。

特に春の土用期間は、寒暖差や生活環境の変化によるストレスが溜まりがちな時期にもなりますので、天気の良い日にお散歩を行うと気分転換にもなり心もリフレッシュします。

土用は栄養が重要になる季節

東洋医学では春夏秋冬土用の各季節に旺盛になる自然のエネルギーというものがあります。

・春は木が芽吹き、花が咲く木のエネルギー。
・夏は万物の成長を促す太陽の力、火のエネルギー。
・秋は落葉のように余分なものを切り落とし、物事を整理し終結に導く金のエネルギー。
・冬は寒さに打ち勝つ為の溜め込む水のエネルギー。
土用は、揺らぎやすい季節の変わり目をサポートする為の栄養を中心とした土のエネルギーが旺盛になります。

土から得られる栄養は植物や食物を育てる為には重要なものであり、土の中の栄養状態によって植物や食物の成長度合いが異なります。

また、私達人間や動物が食べ物から得られる栄養も命を維持してゆくことに必要不可欠なものです。

その生きる為の根源である栄養を東洋医学では「土」と表現しています。

改めて、季節の変わり目の体調を崩しやすい土用期間にしっかりと体に栄養を蓄え、揺らぎづらい体作りを行うことはとても重要なことなります。

土用に不調になりやすい臓器

東洋医学では土用は「胃腸」と深く関係しています。
胃腸は消化・吸収・排泄までを行う臓器で、簡単に言うと口から食べ物が入り、出るまでの1本のホースです。

胃腸の働きが低下すると
・食欲不振
・暴飲暴食
・お腹の張り
・胃痛
・便秘・下痢
・冷え、浮腫み
等の症状が現れます。

土用はこのような胃腸の不調が起きやすい期間ではありますが、胃腸の働きが低下した状態が続いてしまうと、土用に大切な「栄養」を吸収する力も低下してしまいます。

土用は胃腸をしっかり整える期間

土用期間はいつも以上に胃腸の働きを整え、栄養を吸収しやすい体作りを行い、次の季節の準備を行う事が大切です。

日常生活の中で胃腸の働きを低下させてしまう代表的な以下の3つの事を控え、胃腸を元気にする過ごし方を見直されると良いです。

・冷たい物を食べる、飲む
・甘いものを食べ過ぎる
・添加物やお酒を食べる、飲む

体力の源は、食べ物から得る栄養になりますが、その栄養をしっかりと吸収できる胃腸の働きが体力作りには欠かせません。

胃腸の調子が良ければしっかりと体力を補うことができ、季節の変わり目の揺らぎやすい体の土台を築き上げることが出来ます。

精がつくものを食べる

昔から土用丑の日の代表的な食べ物と言えば鰻になりますが、例え鰻でなくてもタンパク質が豊富に含まれているお肉を沢山食べられると良いです。

東洋医学では、土用期間に特に意識して食べられると良いお肉が牛肉になります。

牛肉は胃腸の働きを高め、より栄養を吸収しやすい体作りをサポートしてくれる作用があります。

また、牛肉が苦手という方であれば豚肉がおすすめです。

豚肉は東洋医学では季節関係なく「精」がつく食べ物に分類され、食べれば食べる程体力の貯金が増えると言われているスーパーフードです。

反対に、牛肉や豚肉などのお肉類が食べられなくなってしまった場合は「胃腸が弱っているサイン」でもありますので注意が必要です。


まずは普段のご自身の食生活を振り返り、胃腸を弱らせてしまう習慣を見直されてみて下さい。

さらに、精のつく食べ物に加えて夏の熱がこもりやすい体を冷やすきゅうりや茄子、トマト、ピーマンなどの野菜も春の土用期間から多く食べられると、いざ夏に入った時の夏バテ防止にも繋がります。

土用に毎回体調を崩してしまう人

季節の変わり目である土用期間に、毎回のように体調を崩してしまう方がいらっしゃいます。
確かに季節の変わり目は体が揺らぎやすいので、体調を崩しやすい期間ではありますが、あまりにも毎回体調を崩してしまう場合は、体の土台となる「胃腸」の調子を基礎から整える必要があります。

胃腸が不調になりやすい方は、普段から少食や過食、偏食などを繰り返し食欲にムラがある方が多いので、特にこの土用期間の間は前述した精がつくものをご自身が思う以上に平均的に食べることを目標にされると良いです。

また、普段から胃腸の調子に問題がないよ。と言う方も土用期間はいつもより体重が増えやすい傾向にあります。

それは季節に対応した自然の現象でもあるので、「次の季節に向けて体の中に栄養を溜め込んでいるのね。」とプラスに捉えて頂ければと思います。

土用に気を付けたいこと(心編)

土用は胃腸の働きがとても大切な期間になりますが、食生活以外にも胃腸の働きを弱らせてしまう原因があります。

それは、「くよくよと思い悩み過ぎることです。」

私達は日々AかBどちらにしようか。など、大なり小なり決断をしなければならない場面が多々あります。

そのような時に思い悩み過ぎたり、決断までに時間がかかり過ぎてしまうことは東洋医学では胃腸に負担をかけてしまうことに繋がります。

迷った時にはとにかく、早く決め切る。悩み過ぎない。普段からそのような癖をつけてゆくと、不思議と胃腸の働きが良くなるのを感じられると思います。


改めて心をやわらかく保つことを土用の期間は意識されると良いです。

気候と私達の心と体

東洋医学は、自然のリズムに従って生活をしよう。と言う考えの元に発展した医学ですので、
「季節に合わせた過ごし方」が心や体を健やかに保つ為には欠かせない要素となります。

自然界における気候と私達の体は密接に関係し、気候が不安定であると私達の心は不安感が増し、体も不安定になります。
また、気候が安定すると私達の心や体も安定し前向きになります。

しかし、ここで言う安定とは決して晴れの状態が続くことを指している訳ではありません。

極端な気候と心や体への影響

安定した気候と言うのは、春→土用→夏→土用→秋→土用→冬→土用の流れのように、従来の基本的な季節が緩やかに巡行する流れです。

例えば、春は寒さと暖かさが交互にありながらも、土用に入り少しずつ暖かい日が増え、夏の準備期間を経て、本格的な夏へと移行してゆきます。

一方で近年はと言うと、冒頭でもお話ししたように1日に20度近くの気温差があることが珍しくありません。

大袈裟に感じるかもしれませんが、午前中は夏のように暑く半袖を着ていたと思えば、午後は冬になりコートを着る。そのような極端な気候の変化が著しいのが現代です。

それも季節の変わり目である土用に体調を崩しやすいといった概念が薄れ、1年中常に乱高下を繰り返していると言ったイメージです。

自然界における気候と私達の体は密接にしているので、裏を返せば極端な気候の変化によって私達の心や体が揺さぶられる機会もそれだけ多くなると言うことでもあります。

「○○過ぎる」と言った極端な行動・考え方・食べ物等は、心や体にダメージを及ぼす原因となりますが、極端な気候の変化も私達の心や体を不安定にさせてしまう原因となります。

益々気候が不安定になってゆく現代は、今まで以上に激しい変化にも揺さぶられない、強い体作りが必要になる時代だと感じています。

揺さぶられない体を作る為にできること

武道などに使われる言葉で、心技体と言う言葉があります。


心は、私達が思いを巡らす心のこと。
技は、技術のこと。
体とは、私達の体のことになります。


そして、体→技術→心と1番簡単な順番に左から並んでいます。
例えばどんなスポーツ始めるにも1番初めに行なわなければならない事が基礎である「体力作り」です。
そして次に技術、最後に最も難しいのが心の状態です。

現代は、この最も変える事の難しい心に不調を抱えられる方がとても多い時代ですが、この最も難しい心を何とか変えようとする方が多いような気がしています。

しかし、私が実際に患者さんの体の状態を見て日々思うことは、心の状態を変えようとする以前に体の調子が良くない方がとても多いと言うことです。

心の状態は変えられなくても、体の状態は変えることができます。

体を変えてゆく事はどんな人も行なう事ができる1番簡単な方法であり、基本になります。

それが現代の食べ物の刺激、情報による刺激、極端な気候による刺激など、あらゆる方面から降りかかってくる強烈な刺激から自分自身を守り、揺さぶられない体を作る為の方法であり、そのような刺激により疲れた心を回復する方法だと感じています。

最後に

季節と体の変化。季節と過ごし方。
それらには全て、私達が心と体を健やか保つ為の
昔の方達の知恵がつまっています。

本日は代表的な四季である春夏秋冬を密かに陰で支えている土用に焦点を当てお話しいたしましたが、そんな土用期間を機にご自身の心や体と向き合うきっかけになりましたら幸いです。

本格的な夏が始まる前に、体に栄養という貯金を沢山貯めて、夏を元気に迎えましょう。

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