それから国試までの3ヶ月間、左手で息子を抱っこしながら
右手で問題を解き夜な夜な妄勉強。睡眠時間はほぼ毎日2時間、とにかくぶっ続け勉強。
ろくにメンテナンスもしていないボロボ
私が鍼灸師になったのは今から12年前の春、当時21歳の頃です。
有難い事に12年前から現在に至るまで、鍼灸師という仕事に携わる事が出来ています。
鍼灸師という職業との出会い
鍼灸師になると決めたのは、高校3年生の進路を決めなければならないギリギリの時期でした。
当時は個性的なお洒落や美容に関する事全般に興味を持っていた私でしたが、実際にそのような体験の場に足を運んでみても、好きなはずのものであるのに何だかピンと来ない。将来自分がそのような仕事を行っているイメージが沸かない。といった心境でありました。
好きな事と仕事にしたい事の不一致に悶々とした日々を送る中、転機があったのは柔道整復師を志望していた友人の1人のパンフレットの中に記されていた「鍼灸師」と言う人生で初めて見る文字。
お恥ずかしながら、当時の私は鍼灸がどんな職業であるのか、どんな読み方をするのかさえも分からない大変未知な職業でありました。
しかし、そのパンフレットに記されていた「人間が本来持つ自然治癒力で病気の治癒や美容にも働きかける」と言う言葉に、なぜか猛烈に惹かれたことを今でも覚えております。
その後は鍼灸の体験会に参加し、すぐに入学を決意。無事、将来に向けての一歩を踏み出すことが出来たのでした。
鍼灸在学中に妊娠と体のトラブル
鍼灸学校に入学し、親しい仲間や先生にも恵まれ、様々な事がありながらも着々と鍼灸師になる夢に胸を高鳴らせていた矢先の専門学校2年生20歳の時、妊娠が発覚しました。
当時は、我が子がお腹の中ですくすくと育ってゆく様子に喜びを感じると共に刻々と迫りくる国家試験に向けての不安や焦りで押しつぶされそうになっていたのを覚えています。
日を増すごとに喜び、怒り、悲しみ、等といった様々な感情が激しく揺れ動くことにより、心の状態はもちろん妊娠中の体のトラブルにも発展してゆきました。
しかし、その時に私の心や体を支えてくれたのは、
紛れもなく「鍼灸」でした。
刺さない鍼により妊娠中の体のケアをしてくださった先生方、私の体を気遣いお灸をしてくれた友人達。
鍼灸は産後の肥立ちや子供の夜泣きにも良いという事で、毎日何かしらの鍼灸によるケアをしてくれる方々が周りには沢山いました。
今思うと、本当に有り難かったのですが、その時の本当の効果を目の当たりにするのは、出産を終えてからの事でした。
出産。そして鍼灸による産後の体
専門学生3年生の11月に無事子供を出産しました。
しかし、3ヶ月後には国家試験がを控えており、そんな中1番心配だった事は出産後の子供の夜泣きでした。
夜泣きは出産を経験された方なら1度は通る道であり、精神面や体力面でも最も大変な期間だと思います。
しかし、実際に出産した我が子は拍子抜けしてしまう程に夜泣きをする事がなく、3時間置きに1回の授乳が終わった後はいつも熟睡してくれたのです。
お陰様で国家試験の勉強は捗り、無事試験を合格をする事が出来ました。
また、体を十分に休め体力が回復できたことによって、まるで産後とは思えない程体は快適だったのです。
そんな鍼灸のケアを通し妊娠中・産後の体から改めて気付かされたことは「妊娠中から既に子育てが始まっている」と言うこと。
そして、「夜泣きは当たり前ではない。」と言うことです。
そして、世の中では当たり前として認識されていることも「当たり前だとは限らない。」と言うことを身をもって体感したことでもありました。
鍼灸学校を卒業してから
鍼灸学校を卒業し、益々鍼灸に興味を募らせた私は、子育てをしながらも自分が出来る範囲で鍼灸に携わりたいという気持ちから、在学していた鍼灸専門学校に併設している附属治療院に勤務しながら往診専門の鍼灸師として独立し、家庭と子育て、仕事の両立に励んでおりました。
しかし、実際に臨床経験を重ねてゆく中で、自身の東洋医学の知識の乏しさや経験不足から様々な壁に直面しました。
その頃、同じ鍼灸師仲間達が先輩や師に技術を学び、切磋琢磨する様子を目の当たりにした私は、自身も初心に戻りそのような場所で一から東洋医学を学びたい。との思いに至り、往診を続けながらも大手鍼灸院グループにて務めることとなりました。
理想と現実
鍼灸師として東洋医学を学ぶ事に心を高鳴らせ、足を踏み入れた私でしたが、実際に入ってみて分かった事は鍼灸業界での鍼灸の立ち位置というのは、「マッサージついでに行うオプション的な立ち位置であるもの。」と言うことでした。
鍼灸師という治療家になりたくて資格をとった筈なのに、日々行うことはマッサージ業務とマッサージついでに行うたまにの鍼施術。
勉強も、マッサージの仕方がほとんどです。
しかし、それは何も特別な事ではなく、鍼灸だけを生業にしている「鍼灸院」や「鍼灸師」と言うのは実際は限りなくゼロに近いと言うことも後々理解した現実でした。
何かが違う気がする。そのような葛藤を抱える私とは裏腹に、日々の業務をこなし、一生懸命従事する勤務先の同僚やかつての仲間達。
この頃の私は、言葉に表すことの出来ない、何だかもやもやとしたものを内に抱えながらも、受け入れなくてはいけない現実と理想に苛まれ、感情をなくしていたような気がします。
鍼灸業界から、美容業界へ
相変わらずもやもやとした感情を抱え日々を過ごしていた私が最終的に至った結論は、一旦鍼灸業界を離れたい。と言うものでした。
離れる事で、見えてくる世界が変わるかもしれないと感じたのです。
4年程携わった鍼灸業界から身を引き、元々美容に興味があったのもあり、東洋医学をベースとするエステ店へと転職するに至りました。
そちらでは、よもぎ蒸し、アロマオイル、ハーブ、オイルマッサージ、フェイシャルマッサージ、吸い玉、かっさ等、美容のノウハウについて本当に沢山の事を教えて頂きました。
健康志向の高いお客様や、職場の方々の影響により、ヨガや筋トレにどっぷりはまったのもこの時期です。
時にはタイにまで行き、タイ古式マッサージやタイ式フェイシャルマッサージ等を学びにも行きました。
4年間の間に感じていたもやもやを発散するかのごとく、日々が新鮮であり刺激的でした。
好奇心に溢れた私は、ありとあらゆる健康法を試し、がむしゃらに体と向き合う過程で、やり過ぎにより体調を崩し、メンタル面の影響から、拒食や過食を繰り返してしまったり、誤った食事法やダイエットより月経が止まり、肌はボロボロ、アトピーのようなの症状に悩まされた事もあります。
しかし、がむしゃらに行い続けた3年間の経験を通し、分かった事が1つありました。
それは、世の中で良いとされているどんな健康法もその効果は一時的であり、改善までには至らない。ということです。
そして同時に、鍼灸業界に身を置いていた頃の何かが違う気がする。あの感情がふつふつと湧き上がってくるようになったのです。
恩師に出会う
そんなある日、インターネットでふと東洋医学を主体とする鍼灸師に向けての勉強会の情報が目にとまりました。
早速会場に足を運んでみたところ、そこでは実際に鍼灸施術のみを行う先生方が集まり、今から2千年前の東洋医学の医学書を元に学ぶ勉強会が行われていたのです。
その場ですぐに申し込みを決意し、後の恩師となる方に出会った私は、それからと言うものの東洋医学にどっぷりと浸かる日々を過ごす事となりました。
治療方法から始まり、自然と体の繋がり、食事と体における不調、正しい体の使い方や運動法、感情と体の繋がり等。
東洋医学に基づく方法によって1つ1つ自身の体に落とし込んだ結果、どんどん体は変化し、以前まで当たり前だと思っていた慢性的な肩こりや頭痛に始まり、女性特有の月経前のイライラや浮腫みにもほとんど悩まされる事がなくなりました。
そして、そのような体の変化に伴い、心にも大きな変化がありました。
それは、今まで受け入れられなかった事が受け入れられるようになったことです。
不調が消え、体が元気になり、自分自身に余裕ができた事で家族関係に始まり、周囲との人間関係もぐんと良くなったのです。
しかし、そのような状態に至ったのは決して魔法の力でも何でもなく、ただただ「体」という土台を根本から見直し整えた事により体と繋がる心にも変化を及ぼすことが出来たからです。
いつも真剣勝負でぶつかり、叱咤激励してくださった恩師との出会いは私にとってかけがえのないものであり、今でもとても感謝しております。
鍼灸師として独立開業
これまで鍼灸院やエステ店、東洋医学主宰の勉強会、沢山遠回りをしたものの、7年の期間を経て、2020年に札幌大通りにて鍼灸院を開業いたしました。
開業した当初は、美容業界で学んだ経験を活かしたいとの思いで、外面的なケアによるフェイシャルマッサージや美容鍼などもメニューに取り入れていたのですが、患者さんの体が整い、健康的な体を取り戻すと同時に、例え外面的なケアを直接行わなくても患者さんの顔色が明るくなり、肌艶がアップし、髪の毛にもハリがでる等の美容面への変化を目の当たりにしました。
そして、そのような様子を見る中で改め確信に至ったのは、美容と言うものはあくまでも「体が元気であるからこそ。」であり、体の健康をなくして、女性の永遠のテーマ、美容は手に入れる事は難しいと言うことです。
また、かつて将来の進路に迷っていた学生時代、
鍼灸師になるきっかけとなった「人間が本来持つ自然治癒力で病気の治癒や美容にも働きかける」の言葉。この言葉の本当の意味を理解した出来事でもありました。
東洋医学専門の鍼灸サロンへ
「体を整えたその先に、自然と美容が手に入る。」そんなインナービューティーに特化した鍼灸サロンを作りたい。
そう思い立ってからは、外面的なフェイシャルなどのメニューを全て取り払い、現在の鍼灸のみに特化した東洋医学専門のサロンとして施術を行っております。
当店の2Faceの意味、ロゴに込められた思い
現代は、自己肯定感や自尊心。などのポジティブな言葉がネット上に溢れ、あたかもネガティブな感情がいけないかのように感じてしまう事が多々あるかと思います。
しかし、実際人間は喜怒哀楽、どんな動物よりも様々な感情を細かくもつ生き物です。
東洋医学の考え方に、「陰陽」というものがあります。
陰陽とは、全ての事柄において陰陽が存在し陰と陽のバランスを保ちながら物事は成り立つという意味を持ちます。
一見良いとされる、ポジティブである楽や喜び等の感情であっても、長らくその感情に浸り続ける事で体は傷付き病気になります。
また、私達があまり良くないと感じる怒りや哀しみの感情も、人間である以上誰もが持ち合わせている当たり前の感情であり、無くてはならないものです。
「楽しいや喜びの感情。」そんなポジティブな感情だけをいつも持ち続けなければいけないという事は決してないのです。
私自身、健康とは何なのかを様々な角度で模索してゆく過程や誤った健康法を行う中で、体調を崩したこと、心を壊してしまった経験が沢山あります。
その度に様々な感情に触れ、時にはネガティブな感情に苛まれてしまう自分に嫌気がさすこともありましたが、その度にどんな感情も受け入れて前に進もう。と思えたのは、私の中にこの東洋医学の「陰陽」の言葉が根強くあったからです。
皆さんも自身の体と向き合う過程で、すんなりとは行かない事もあるかと思います。
そして、ネガティブな感情に浸ってしまうこともあるかと思います。
しかし、そのような感情は決して望ましくない感情ではないこと。必要な感情であり、自然な感情と言うことを受け入れ、前向きに進んで欲しい。
2Faceの名前やロゴには、そういった意味が込められています。
私が患者さんに提供したいこと
体に起こる不調やトラブルには、必ずそこに至るまでの原因があります。
その原因には季節の過ごし方、体の使い方、物事の考え方、感情、食生活による味の嗜好、寒熱など、長年にわたる悪習慣が地層のように重なることで、ある日突然「どうにも出来ない形」となり、体の表面に症状として現れてきます。
しかし、実はそのようなどうにも出来ない形が体に現れるもっと前から、体は小さなサインを私達に送り続けています。
ただ、私達がそのような小さなサインに気付かないように蓋をし、見過ごしてきただけなのです。
もちろん年齢を重ね、体力が低下しすることによって、今までとは異なる体の変化が現れるかと思います。
しかし、体がその年齢の範囲内で健やかであれば、決して誰もが通る老いに必要以上に悲観する事なく、自身が今できる年齢の範囲内で出来る事を見つけ、その中で楽しみを見つけながら充実した生活を送ることが出来ると思うのです。
むしろ、そのような年齢に合わせ、体の使い方や考え方を柔軟に変化させながら過ごしてゆくのが無理のない体、ストレスがかからない、心や体にとっても心地の良い体となります。
そして、人間として自然な年齢の重ね方でもあります。
私がこの鍼灸を通し皆さんに提供したいことは、
東洋医学の最大の強みである人間が本来持つ免疫力(自然治癒力)を引き上げ、健康の底上げを行うことによって心身の不調や病を完治することです。
1人でも多くの方が今よりも健やかな日々を送れるよう、誠心誠意サポートしております。
鍼灸を通し、目指してゆきたいこと
先程もお伝えいたしましたが、体に起こる不調やトラブルには、必ずそこに至るまでの様々な原因があります。
私が鍼灸施術を行うと同時にいつも大切にしていることは、その体の段階段階によるアドバイスです。
アドバイスには、東洋医学的に見た体の使い方や食事、考え方等、一見体と関係と関係ないのでは?と言うようなものもあるのですが、患者さん自身がそれらを実行し、施術を続け、体が元気になる過程により、患者さん自身に以前の心や体とは異なる変化が現れてくるはずです。
患者さん自身が、体と向き合う中でその「変化」に気付くことで、どのような生活を送ってゆけば日常を心地良く過ごせるのか。どのようにしたら、自身の体が快適なのかに気付き、自分の心や体の状態を知ることで、二度と同じような症状に悩む事を防げるようになります。
東洋医学は自然界におけるあらゆるものを様々な角度で心や体の状態と結びつけた学問です。
恐らく東洋医学に興味を持たれる方は、きっとその場凌ぎのものではなく、「本質」から物事を見直してゆきたい。と言った考えをお持ちになられている方が多いと思います。
せっかく東洋医学に興味を持って頂いたからには、ただ単に鍼灸を通し体を治して終わり。
ではなく、そのような体の変化に気付き、「自分自身の体を自分で整える自信がある。」それ位、胸を張って言える方々が1人でも多く増える事を目指しております。
「健康」にとって、本当に大切なこと。健康の本質
健康の本質は、まずは「体が元気であるかどうか」です。
元気と言うのは、多少体に不調を感じる事があっても、自分自身の免疫力(自然治癒力)によって不調を治すことが出来る体です。
つい、私達は日々様々な感情が発生する「心」にばかり目を向けて、心の思うがままに行動をしてしまいがちです。
そして現代には、心の保ち方や心が整うなどと言った「心」に目を向けた情報が沢山あります。
しかし、本来私達人間は「体」を使い、体によって様々な情報を得て、それを元に行動を起こし生活をしてきた動物です。
体が元気になると、食欲も湧き、意欲が湧き、
運動をしないと。とわざわざ思わなくても、勝手に体を動かしたい。と言うエネルギーが発生します。
そして、そのエネルギーと言うのは、ころころと形を変え、ゆらゆらと揺れ動く心よりも、何倍にも強く私達を突き動かす力をもっています。
また、元気な体なというのは、ころころと変化し、揺れ動く心の状態をしっかりと抑え、必要以上に乱高下しないよう防ぐ作用もあるのです。
それは正に、心(精神)と身体は切り離すことのできないと言う東洋医学の心身一如(しんしんいちにょ)の言葉に通じています。
決して大袈裟でも何でもなく、
体ありきの健康。
体ありきの心。
体ありきの美容。
それ以上でもそれ以下でもなく、体は全てにおける健康の「土台」に必要不可欠なものです。
体と食事
現代は様々な情報が飛び交う社会の中で、選択肢の幅が広がると同時に、自分自身が何を選択し何を取り入れるかを見定めてゆくことがより一層必要な時代であると感じております。
その中の1つが、食生活です。
食は生きることの根源であり、食べたもので体は作られています。
食事というと、無添加やオーガニックなどの食品を口にすれば良いのではないか?
と考えられる方も多いのですが、例え体に良いとされている無添加やオーガニックと呼ばれるものであっても、決して体に本当に良いものとは限りません。そして、金額が高いものが良いものとも限らないのです。
そのような食事の良し悪し1つにつきましても
良い悪いの判断が自身の体の感覚や味覚で分かる。
と言うのも、体の健康においてとても大切なことです。
現代は、益々食による影響により、心身の不調が色濃くなってゆく時代になりました。
特に食と体は切ってもきれない関係です。
普段の鍼灸施術に加え、東洋医学による薬膳の知識を元に、食におけるアドバイスも行っております。
最後に
ここまで大変長い文章となりましたが、読んでくださりありがとうございます。
自分自身の体の状態を見つめ直すきっかけになればとの思いで、Blogなどで食事や体、心における考えを東洋医学を元に、様々な視点からご紹介しております。
少しでも皆様のお役に立てますと幸いです。