私には、昔から勝手なマイルールがあります。
それは、やるならとことんやってみること。
現在は東洋医学を学び、体にとって極端な事は良くないと言う事を知り、昔程には達していないですが、それでも尚「とことんやってみる精神」ふとした時に顔を覗かせることがあります。
私の治療院には、様々なお悩みを抱えられる方が来院されますが、東洋医学は西洋医学と異なり、◯◯には◯◯の症状と言うものがないので、ある意味来院される年齢層も新生児〜90代まで幅広く、毎日が新鮮で刺激的な日々です。
ただ、それと同時に自分が経験した事のない痛みの感じ方や不調の辛さ、それに伴う心情などが分からなかったりすることもあります。
自身が経験していない事は相手に寄り添い、アドバイスを伝えることは出来ない。
それが私の中での考え方です。
楽しい事だけではなく、苦しい事や悲しい事、全て1つ1つ経験をしていくと、その経験に付随し体や心の変化、不調を感じとることが出来ます。
それは誰かに教わったり、本を読むだけでは得られない自身の経験。
それが東洋医学と言う、ある意味精神性と繋がる学びを得る中で重要なものだと思っています。
そして、これまでもそんな経験を自らする為に、手っ取り早く体を壊し病んでみたり、精神的にとことん追い込まれる状況を度々作ることがありました。
ほんの一例としては、食べない事を何日も続け3日で5キロ落としてみたり、1日中狂ったように走り続けてみたり、半身浴を7時間ぶっ続けで入ってみたり。(つっこみ所満載)
器用な人間ではないからこそ、
本当に様々な事を自身の体で体感してきました。
そんな中で、最近は胃の不調を通り越し、胃が壊れてしまっている方がいらっしゃいました。
具体的な症状としては
・食べても食べてもお腹が空く
・満腹にならない(なった事がない)
・無限に食べる事が出来る
東洋医学では、これらの症状は胃虚証と言い
胃が壊れてしまっていると判断します。
患者さんは食べる事が好きで無限に食べる事が嬉しいと思っていますが、自分が好きな事と体が好きな事は違います。
もちろん、自身の気持ちとは裏腹に、体にはしっかりと不調が出てきます。
そして、このような症状はちょっとやそっとの胃の不調では体感する事が出来ません。
鍼灸師になり、健康をベースとした生活がすっかり板についた私。
しばらく胃を壊すと言う経験をしていませんでした。
しかし、患者さんの気持ちに何とか寄り添いたい。気持ちを共感し、辛い体験を共有しなければならない。というスイッチがいきなりON。
いや、なんなら体感したいの気持ちが勝り、
使命感やら意欲やら、様々な感情が混じり合いながらも自分の体を壊して見ることにしました。
まずは、簡単に手っ取り早く胃を不調にする方法から始めてみました。
それは、辛い物を食べること。
多少の辛味は、発汗作用により体の巡りを促し気分転換となり秋冬の養生法にも使えます。
しかし、今回は多少の辛味ではなく一瞬で胃を壊す辛味が欲しい。
そう思い立ち、向かった先はスープカレー屋さん。
無添加スープで体に優しいお店を選んだものの、それとは裏腹に1〜10まである辛さの中のもちろん辛さ10を注文。
言うまでもなく旨味はなく、ただただ辛く咳き込む。
胃は次第に重く、体に不快感がのしかかる。
着々と胃が壊れ始めていることを感じながら食べ切りました。
そしてその日の夜、口の左端が切れ、喉の渇きを感じる。
よし、「胃が壊れ始めている。」
しかし、それだけで終わる訳にはいかないのです。(何の使命感)
次の日にはキムチとチャンジャを過食し、胃に悪いお米、炭水化物を大量に食べ、追い討ちをかけます。
その数時間後からは喉の渇きがピークに達し、それと同時に食べても食べても満腹感を得られない。
2日目にして、完全に胃が壊れました。(目標達成)ガッツポーズ。
3日目になると、満腹感が得られないのはもちろん、常に食べたい衝動が押し寄せてきます。
お腹がいっぱいにならないので、考える事は食べ物の事ばかり。
食べ物に執着する生活。
しかし食べても食べてもお腹が空くの悪循環。
食欲が増す度に胃に対する負担が大きくなるが、食べたい。
そんな終わりのない負のループを繰り返します。
そして同時に心の変化も感じる事ができました。
それは、満腹感がなく体が満たされない体と比例するように満たされない心。
心にぽっかりと穴が空いた気分。
そんな虚無感を感じます。
と同時に胃が壊れた事により、胃と繋がっている腸の調子が悪くなり、お腹の調子も安定しない。
(これは、東洋医学的には便秘や下痢どちらも同じく胃腸が悪いと捉えます)
更に体全身の倦怠感、浮腫み、手足のべたつき、最も辛いのが左の背中の痛み。
東洋医学的には背中の左は胃や脾臓と関係しているので、そんな左の背中が痛くて仕方ない。
何か動作をする際に感じる痛み、動作をしなくても左の背中に感じる重み、また背中が腫れているせいで姿勢も猫背になってしまいます。
正しい姿勢にしようとすると、背中が丸まっているせいで伸ばすと痛みが走ります。
様々な胃に関係する不調が一気に出現し、目標達成出来て嬉しい反面やっぱり体は相当辛い。
きっとこの体で日々を過ごしていたら、それが当たり前のように感じられてしまうと思うが、快適とは程遠く次第に心が壊れてしまうと感じました。
体を壊して見えたもの
体を一気に壊すと言う経験をしたからこそ、改めて見えてきたものがあります。
「自分の体を大切にしよう。」
心を変えることが難しくても、体を変えることは出来る。
体はいつも体にとって良い物を求めている。そして、私達人間は本来そんな感覚が備わっています。
体が軽やかになれば、体と繋がる心も軽やかになり、日々見えているもの、感じるものに変化が現れます。
心と体の繋がり。切っても切れない関係。
当たり前なようで、当たり前と感じる事が難しい。
ただ、それらは私達が生活する上での“原点”です。
現在はそんな絶不調を迎え4日目。
年末まで、残す事あと5日。
何とか治しきり、新年を迎えなければ。
昨夜のクリスマス料理に加え、お正月料理、この体では行き着くとこまで行ってしまいそう…。
今なら、年末用に買い込んだ冷蔵庫の中身を食べ尽くせる自信があります。
と、同時にここから体を整えるまでの過程が楽しみだったりもする。
次は、どんな症状を体感しようか。(健康が趣味な人なんです)
経験した事のない新たな不調を抱える患者さんが増える度に私の冒険心は止まる事を知らない。
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