衣服と健康のはなし。

こんにちは。
いよいよ12月を迎えますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
近頃は時間が経つのがより一層早く感じます。

30歳半ばに差し掛かり、3ヶ月毎に季節が移り行く楽しさを心の底から味わいつつも、その短過ぎる時間の儚さに、もはや冬が過ぎ去ってしまうのも悲しいな、なんて思わされているこの頃です。

___さて、本日のテーマは衣服です。
普段皆さんは洋服を購入する際、どんな基準で洋服を選んでいますか?

好きな色、好きなデザイン、着心地、価格など、人によって選ぶ際のポイントは様々だと思います。

しかし、衣服によって体のストレス度が変化するということはご存知でしょうか?

私達は普段視覚、嗅覚、味覚などの様々な感覚器官から外の刺激を受け取り、それによって「好き」「嫌い」などを無意識に判断していますが、その内の1つ、触覚を通じた皮膚感覚からも「心地良い」「心地悪い」を感じ取っています。

そして、それらの感覚は心(感情)より真っ先に体に反応が起こります。
もしかすると、普段何気なく着用している衣服が実は体にとってストレスである場合もあるかもしれません。

本日は衣服が私達の体に与える影響と、ここだけは気を付けたい衣服のポイントについてまとめています。

一見そんなとこまで??と言った内容に思えるかもしれないですが、今よりも健康な日々を送りたい。そう思われている皆さんにとって、着用している衣服も健康には欠かせない要素の1つです。

自身の衣服での失敗エピソードなんかもご紹介しておりますので、少しでも参考になりましたら幸いです。

衣服によって体のストレス度が変わる?

本題に入る前に、初めに感覚器官のお話をしたいと思います。
誰もが持ち合わせている視覚や嗅覚、触覚、味覚、聴覚などの感覚器官はなぜあるのかというと、私達の命を守る為にあります。

かつて人間がサバンナの中で生活していた際に視覚や聴覚によって敵なのか味方なのかを判断したり、味覚や嗅覚によって体に害があるのかないのかを判断するなど、感覚器官を通して私達にとっ危険が及ぶ出来事を瞬時に感知し、自分自身の命を守る為に進化したのがこの感覚器官です。

その中でも、触覚は皮膚を通して自分自身を守る機能になります。

私達の身の回りには「肌触りが良い。」「肌が合う。合わない」などの言葉があるように、触れた際に心地良くて安心出来るものなのか、心地悪くてストレスを感じるものなのかを瞬時に皮膚が判断し、それに伴い体の反応も変化します。

では、心地良くて安心出来る時と心地悪くてストレスを感じる時、体はそれぞれどのような状態になるでしょうか?

少し想像して頂きたいのですが、温かくて柔らかいものに包まれている自分と冷たくて硬いものに包まれている自分、どちらの方が心地良いと感じられそうでしょうか?

恐らく大半の方は「温かくて柔らかいものの方が心地良さそうだな。」と思われるはずです。

そして実際に、肌を通し伝わる刺激が体にとって温かくて柔らかい、心地の良いものであれば自然と体が緩みリラックスをする一方で、冷たくて固い、心地の悪いものであれば体は緊張しストレスを感じやすくなります。

そしてそれは私達が普段見に纏う衣服の素材によっても同じことが言え、着用する衣服によって体のストレス度も変化します。

東洋医学で考える皮膚

東洋医学では皮膚は肺臓と関係しています。
肺臓には呼吸・バリア機能・水分代謝などの働きがありますが、今回は肺臓のバリア機能について少しお話ししたいと思います。

バリア機能は、その名の通り外部の刺激から体を守る働きです。

よくCMなどで「美容成分が肌の奥まで浸透〜。」などのフレーズを耳にしますが、皮膚のバリア機能を破り何でもかんでも体の中に侵入してしまうと体は大変な事になってしまうので、実際はこの皮膚のバリア機能によって様々なものが体の内側に侵入してこないよう体は守られています。

更に、直接肌に何かを塗布しなくともこのバリア機能は日々外部の刺激と戦っています。

その代表的なものが風、熱、湿、燥、寒などの季節の変化によるものです。

春夏秋冬はもちろん、例え同じ冬であっても日によって気温、寒気や冷気、空気の乾燥や湿り具合も異なり、1日足りとも同じ時はありません。

毎時、毎分、毎秒、時々刻々と変化する季節に対し寒ければ毛穴をきゅっと閉じ緊張させたり、暑ければ毛穴を緩ませ汗をかけるようにしたりなど、いつもどんな時も皮膚は皮膚のバリア機能を使って私達の体を守ってくれています。

また、そのような小さな変化に瞬時に気付き対応できるという事は、皮膚というのはそれだけ繊細で敏感な場所であるということも分かります。

このような事からも、見に纏う衣服によって皮膚(体)が緩むのか、もしくは緊張するのかなどの変化が起こると考えるのは自然なことではないでしょうか。

自然素材のものは体を緩める

自然素材の衣服であれば、基本的にはご自身のお好きなもので構いませんが、個人的には綿・麻・シルク素材のものをおすすめしています。

なぜこの3つをおすすめしているかと言いますと
この3つには体がリラックスしやすい“温かくて柔らかい”保温性と通気性が含まれ、尚且つ比較的手に入りやすいといった特徴があります。

また、吸湿性もあるので季節を問わず快適に使えるといった性質を持ちます。

更に体の箇所で特に緊張しやすい部位は背中、胸周りやお腹周りです。

全ての衣服に天然素材を取り入れるのは難しいと言う方は、せめて肌着(キャミソール)や下着など、肌に直接触れる箇所だけでも自然素材のものにされると体の緊張も和らぎやすいです。

素材で風邪の引きやすさが変わる(特に秋冬は注意)

東洋医学では、風邪をひく原因を「風邪」と「寒邪」によるものと考えます。
一言で言うと、「冷たい風が体の中に入り込むと風邪などの感染症を引き起こすしますよ。」といったことです。

この風寒のセットは、通常は首の後ろや手首、足首などの”“のつく所から体の背中側に侵入し悪さをするので、患者さんには毎年風が冷たくなる秋頃になると手袋やハイソックス、スカーフなど、首がつく周りをガードするようにとお声掛けしているのですが、それ以外にも風邪を引きやすくなるポイントがあります。

それは、どんな素材をインナーに使用しているかです。

結論から言うと、汗をかきやすい部位に汗を吸収しやすい素材を使用しているかどうかで、風邪の引きやすさが驚くほど変化します。

汗と風が風邪の始まり

夏に汗を多くかくイメージがあるかと思いますが、実は冬も汗を多くかきます。

特に冬は厚着をして屋外を歩いている間に汗をかいたり、屋内の温度も高く設定されているので汗をかきやすいです。

また、寝汗は誰もが季節関係なくコップ1杯分程かくとも言われています。

この汗をかいた際に、汗を吸収しない素材のものを着用していると、濡れたものが肌に長く吸着している状態が続きます。

更にそこへ風があたり、濡れた衣服が体を冷やすことが風邪の始まりになります。

また、人間が最も汗をかきやすい場所は、額の次に胸周りや背中などの上半身が中心です。
いずれも、先程お伝えした体の中で緊張しやすい場所と同様の場所に汗もかきやすいという事が分かります。

繰り返しにはなりますが、特に汗をかきやすく、肌に接する部位には自然素材の汗をしっかり吸収出来る素材のものを使用することが風邪予防に繋がります。
特に風が冷たくなる秋や冬にはより注意が必要です。

普段風邪をひきやすい方や、汗の量が多い、体が冷えやすいと感じる方は、外出する前に事前に替えの肌着を持参したり、背中部分に自然素材のフェイスタオルを1枚入れ、汗をかいたタイミングで取り替えるなどといった方法もお勧めです。

いずれにしても、汗を放置しない・汗をしっかり吸収させる素材を肌の上に身に付けることが風邪予防の一歩になりますので、是非意識して生活されてみてください。

私の風邪の失敗談

先日、年末に向けクローゼットの中身を整理している際に、買った覚えのない長袖ヒートテックが出てきました。

素材はポリエステルだったのですが、着用する際は肌着の上に着れば良いや。とのことで、そのままとっておくことに。

その日の夜、長湯をした後のお風呂上がり。
一体何に自信を持っていたのかは分かりませんが、「まぁ、これくらい大丈夫。」そんな軽い気持ちで直接肌の上にそのヒートテックを身に付け眠りにつきました。

朝起きると何だか背中らへんが冷たくぞくぞくするなぁ。と違和感があったものの、「まぁ、大丈夫。」と謎の自信を再びもったまま、その上にシャツを着用し歩いて治療院へと向かいました。

院は前夜の極寒が尾を引き、とても寒かったので暖房を26℃に設定。

その日は休憩の時間もない程慌ただしい日だったこともあり、すっかり暖房の温度を下げる事も忘れ、治療中は額や背中にじんわりと汗をかいていたのを覚えています。

帰宅するや否や、背中のぞくぞくした感覚が背中一面に広がるに加え、頭痛と体の重だるさなど、風邪の代表的な症状が現れました。

その後は慌てて熱いお風呂に浸かり、目一杯汗をかいて風寒の邪気を出し切る。といった粗治療と鍼を行い完治に至りましたが、よくよくそれまでに起こった出来事を振り返ってみると、お風呂上がりの汗、寝汗、日中の汗を全て放置したままポリエステル素材のヒートテックを着用し、体が冷えきってしまった事が今回の引き金の原因だと感じております。

つい先日アップしたBlog記事では、「今年の冬は全く冷えを感じない。」なんてぬか喜びしていたのも束の間、調子が良くなると途端に自分に甘くなる癖が現れ反省ではあるのですが、改めて「自然素材恐るべし。」と言った出来事でした。

万が一皆さんが風邪をひいてしまった際には、くれぐれもお風呂で長湯をされたりはせずに、ゆっくりお布団の中で休まれてくださいね。

風邪をひいた際の注意点

風邪をひいてしまった際には、汗を放置したまま風にあたらない。ことが風邪を悪化させない為の大切なポイントです。

その中でも特に気を付けたいのは、眠る際には自然素材の肌着を身に付けた上で、肌着が汗で濡れてしまった場合は汗を完全に拭き取り、布団の中で着替えを行うことが1点と、シャワーを浴びた後の着替えは洗面所ではなく、汗を拭き取ってから浴室で着替えることの2点になります。

どちらの目的も汗をかいたまま風に当たることを避け、風邪の原因となる風寒セットを体の中に入り込ませない為の対策になります。(2点目は、風邪予防にもお勧めです。)

この2点を行うか行わないかでも風邪の予後が変わりますので、是非注意点として覚えて頂ければと思います。

最後に

現代は、情報を得るための視覚や食を味わう味覚にばかりに意識が向きがちですが、それ以外にも嗅覚、触覚、聴覚などの感覚器官が私達の体には備わっています。

そしてそれらは何の為にあるかと言うと、自分の体を守る為、自分の命を守る為です。

そのような視点で物事を考えた時に、鼻が詰まってはいけない理由、味覚を汚してしまうものを日常的に食べてはいけない良い理由、必要以上の情報を見聞きしない方が良い理由、肌の感覚に合わないものは遠ざけた方が良い理由など、命を守る為の感覚器官が鈍ってしまうような事柄は控えた方が良い理由、そして何よりこの感覚器官を大切にしてゆかなければならない理由がわかります。

そしてどのようにこの感覚を養うかと言うと、上記に挙げた事と反対の自然のものを見聞きし、自然の香りを嗅ぎ、自然のものに触れ、自然のものを食べることになります。

もしかすると皆さんの中には、わざわざ私がこのような事を言わなくとも、既にそれらに癒しや安らぎを感じ、体を通じて心地良いという感覚が分かる方もあるかもしれません。
理屈や理論ではなく、体で感じられる方も多いはずです。


また、これらの感覚器官は使えば使うほど能力を発揮し、使わなければ使わなくなるほど退化してゆきます。
悲しい事に現代の生活様式は、それらはどんどん退化してゆく方向へと向かっています。

しかし、自身を守る術が限られた現代だからこそ、命を守り、ご自身を守る為の方法として、”本当の意味で体が心地良く過ごせる感覚”を磨き、是非ご自身の生活の中に取り込まれて欲しいと思います。

それらはきっと体だけではない、あらゆる事においての感性を多方面に広げてくれるものだと感じています。

たかが衣服、されど衣服。
衣服ひとつでどう感覚が変化するのか。
きっと答えは体が知っているはずです。

本日も最後まで読んでくださりありがとうございました。
皆さんが日々を健やかに過ごせますように。

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