女性の身体には毎月、身体の中を整え、次の周期へ向かうための働きがあります。
それが「生理」です。
生理は、妊娠するためだけに備わったものではありません。
女性の身体は約1か月をかけて、必要なものを養い、動かし、役目を終えたものを外へ出します。
そして、また新しい周期に向けて準備を始めます。
東洋医学では、この流れがうまく進まなくなると、生理痛や生理不順、不正出血、PMSなどの変化が現れたり、妊娠を望んだときに妊娠しにくい身体の状態につながったりすると考えます。
だからこそ、生理は健康のバロメーターです。
生理に変化があったときは、生理だけを切り離して考えるのではなく、その月の食事や睡眠、疲労、ストレスなどを振り返ることで、今の身体の状態を知ることができます。
今回は、生理を「足す・動かす・整理する」という東洋医学的な身体の流れから考えていきます。
生理には、三つの身体の流れがある
月経周期は、ホルモンの変化などから、一般的にはいくつかの時期に分けて説明されます。
この記事では、東洋医学的な身体の流れを分かりやすく捉えるために、
1.生理後から排卵まで
2.排卵後から生理前まで
3.生理期間
の三つに分けて考えていきます。
1.生理後から排卵まで|足す・補う・蓄える
生理が終わったあとの身体は、次の排卵に向けて卵子を育て、子宮内膜を整えていく時期に入ります。
生理によって「血」を使ったあとの身体へ、必要な栄養や休息を補い、次の周期に向けた土台をつくっていく期間です。
生理が終わると、身体が軽く感じたり、気持ちが前向きになったりする方も多いため、つい予定を詰め込み過ぎてしまうことがあります。
患者さんの中にも、生理が終わった開放感からアクティブに動き過ぎたり、自分のことよりも仕事や家族を優先し、無理を重ねてしまう方が少なくありません。
しかし、身体の内側では、次の排卵に向けた準備が始まっています。
この時期は、外へ向かって力を使い切るのではなく、自分の身体にも意識を向け、食事や睡眠、休息によって必要なものを補っていくことが大切です。
肉や魚、卵などのタンパク質や、季節の野菜を毎日の食事に取り入れ、身体に必要な栄養を丁寧にいただく。
疲れているときは、元気になったからと予定を詰め込まず、身体を休ませる。
次の排卵へ向かうための力を、少しずつ蓄えていくようなイメージです。
この時期に無理が続いたり、食事や睡眠が不足したりすると、排卵や次の生理の状態にも影響が現れることがあります。
2.排卵後から生理前まで|動かす・巡らせる
排卵後から生理前までは、これまで身体の中で養ってきたものを動かし、巡らせていく時期です。
この時期になると、むくみや身体の重さ、胸の張り、便秘、イライラ、気持ちの落ち込みなどを感じる方もいます。
東洋医学では、身体の中にあるものがスムーズに巡らず、滞りが生じることで、このような変化が現れる場合があると考えます。
体調がよい日は、散歩やストレッチなど、心地よく感じられる範囲で身体を動かすこともおすすめです。
身体を動かすことで呼吸が深くなり、全身の巡りを促すことにつながります。
ただし、調子がよいからと無理をする必要はありません。
身体を動かした方が心地よい日もあれば、静かに休んだ方がよい日もあります。
その日の身体の状態を確認しながら、動くことと休むことのバランスを取ることが大切です。
また、身体が冷えると、巡りが滞りやすくなる場合があります。
季節や体調に合わせて衣類を調節し、冷たい飲食物を取り過ぎないようにしながら、生理を迎える準備をしていきます。
3.生理期間|出す・整理する
生理期間は、妊娠に至らなかった場合に、役目を終えた子宮内膜を血液とともに身体の外へ出す時期です。
東洋医学的に見ると、これまで身体の中で養い、動かしてきたものを外へ出し、次の周期へ向かうために身体を整理する期間と捉えることができます。
生理中は、そのときの心と身体の状態に合わせて過ごします。
動ける日は普段どおりに過ごしてもよいですし、身体が重く、眠気や疲れを感じるときは、無理をせず休むことも必要です。
大切なのは、「生理だからこう過ごさなければならない」と決めることではなく、今の身体が何を求めているのかを確認することです。
生理期間に現れる痛みや経血の状態、気持ちの変化には、生理中だけではなく、その前から続いてきた生活の積み重ねが関係している場合があります。
生理痛が強かった月は、睡眠不足が続いていなかったか。
食事を抜いたり、簡単なもので済ませたりしていなかったか。
身体を冷やしていなかったか。
仕事や家事を頑張り過ぎていなかったか。
心に余裕がなくなるほど、ストレスを抱えていなかったか。
生理期間だけに対策をするのではなく、その前の過ごし方まで振り返ることで、自分の身体に必要なことが少しずつ見えてきます。
生理の状態は、1か月の生活を映し出す
私たちは、生理痛や不正出血など、目に見える変化が現れた生理期間だけに注目してしまいがちです。
しかし、生理期間に現れているものは、そこへ至るまでの身体の状態が表面に現れたものかもしれません。
東洋医学では、身体に現れた一つの症状だけを見るのではなく、そこに至るまでの身体全体の流れを見ていきます。
生理痛があるから子宮だけを見る。
生理不順があるから、ホルモンだけを見る。
不正出血があるから、その出血だけを見る。
そうではなく、食事、睡眠、排便、疲労、冷え、ストレスなども含めて、今の身体に何が起きているのかを考えます。
生理の状態は、その月の自分の生活を映し出す鏡のようなものです。
不調が現れたときは、自分を責めるためではなく、「今の身体には何が必要なのか」を知るためのきっかけとして受け取ってみてください。
診断名だけに囚われず、身体全体を見る
婦人科にまつわる症状には、生理痛、生理不順、不正出血、子宮内膜症、子宮筋腫など、さまざまなものがあります。
必要な検査を受け、今の身体に何が起きているのかを確認することは大切です。
そのうえで、診断名だけに意識を向け過ぎず、身体全体を見ていくことも忘れないでほしいと思います。
同じ診断名がついていても、そこに至るまでの経緯や身体の状態は一人ひとり違います。
症状だけを見続けると、不安が大きくなり、本来見直す必要のある食事や睡眠、疲労、ストレスなどが見えにくくなることがあります。
必要な医療を受けながら、身体全体の状態や日々の暮らしにも目を向ける。
一つの方向だけではなく、広い視野で身体を見ることが大切です。
また、強い生理痛や不正出血、急に起きた生理周期の変化などがある場合は、我慢せず、まずは婦人科で身体の状態を確認してください。
婦人科系の不調は、最後まで残ることがある
東洋医学の臨床では、肩こりや頭痛、腰痛、胃腸の不調などが少しずつ改善し、身体全体の調子が整ってきても、婦人科系の不調が最後まで残ることがあります。
また、過去に婦人科系の不調を抱えていた方が、現在は治ったように感じていても、身体の表面に現れていた不調が落ち着いたあとに、以前の生理の悩みが再び表に現れることもあります。
私は、そのような状態を「地層の奥にあったものが現れてきた」と表現することがあります。
身体は、表面に現れているものから少しずつ整理し、奥に残っていたものへ向かっていくことがあります。
婦人科系の悩みを長く抱えてきた方ほど、身体が変化するまでには時間が必要です。
短期間で結果を求め過ぎず、生理の変化を確認しながら、長い目で身体を整えていくことが大切です。
妊娠を希望しないなら、生理はなくてもよい?
生理痛や子宮内膜症、子宮筋腫などの治療として、低用量ピルやジエノゲストなどが使われることがあります。
痛みや出血によって日常生活に支障がある場合、症状を抑え、身体を守るために薬が必要なこともあります。
服用している薬を自己判断で中止せず、必要な治療については医師と相談してください。
一方で、薬によって症状が落ち着いているときにも、薬だけに身体を任せるのではなく、食事や睡眠、疲労、ストレスなど、身体全体を整えることは続けられます。
生理は、妊娠を希望している人だけのものではありません。
妊娠を希望しているかどうかにかかわらず、生理に伴う身体の変化は、自分の身体の状態を知るきっかけになります。
「症状があるなら我慢する」
「薬を飲んでいるから、身体のことは考えなくてもよい」
そのどちらか一方ではなく、必要な医療に頼りながら、自分自身の身体と暮らしも見直していく。
それが、これから先の女性の身体を守ることにつながると考えます。
生理痛やPMSを、当たり前にしない
生理痛や胸の張り、むくみ、生理前後のイライラや落ち込みなど、生理にまつわる不調を抱えている女性は少なくありません。
多くの方に症状があると、「女性だから仕方がない」「生理はつらくて当たり前」と思ってしまうことがあります。
しかし、東洋医学では、日常生活に支障を来すほどの強い生理痛やPMSを、女性だから仕方のないものとは考えません。
身体が整ってくると、生理痛が軽くなったり、経血の状態が変化したり、生理前後の心身の揺らぎが小さくなったりすることがあります。
周期どおりに生理が来て、大きな不調を感じることなく終わる。
その状態が続くようになると、いつもと違う変化があったときにも、自分の身体の状態に早く気づけるようになります。
生理にまつわる不調を我慢するのではなく、身体からのサインとして受け取り、必要なときには医療機関へ相談しながら、日々の身体を整えていくことが大切です。
生理を、自分の身体を知るきっかけに
女性の身体は、約1か月をかけて、足す、動かす、整理するという流れを繰り返しています。
足したものを動かし、役目を終えたものを手放す。
外へ出すからこそ、また新しいものを受け取ることができます。
呼吸も、食事も、排泄も、生理も、取り入れることと外へ出すことの両方があって、身体のバランスが保たれています。
生理に変化があったときは、生理だけを見るのではなく、この1か月をどのように過ごしていたのかを振り返ってみてください。
食事は取れていたか。
眠れていたか。
疲れているのに、無理をしていなかったか。
身体を冷やしていなかったか。
自分のことを後回しにし過ぎていなかったか。
一度にすべてを変える必要はありません。
まずは、自分の生理周期や、経血の状態、痛み、心と身体の変化を知ることから始めます。
生理をただつらいものとして終わらせるのではなく、自分の身体を知り、これからの過ごし方を考えるためのものとして捉えてほしいと思います。
女性にだけ起こる生理。
その毎月の変化を通して、身体はさまざまなことを私たちに教えてくれています。
一人でも多くの方が、生理を自分の身体を知るための大切なバロメーターとして、前向きに受け取れるようになってほしいと願っています。




